イベントにおけるリスクマネジメント考~後編~

「まったく知らないことは想像力を働かせることができないため、経験者の知見を借り、想定すべきことを想定する。そのうえで対応することがイベント運営では大切です」。知らなければ予期することもできない。そのため、経験則のあるプロフェッショナルのアドバイスを取り入れることはイベント運営の失敗を回避しやすくなる。

「多くのイベント事故は人的被害や食中毒などの人災ですが、事故の内容も変化しつつあります。例えば1970年代以前の事故は圧死をはじめとした群衆事故が目立ちましたが、最近は自然災害による台風や雷による事故が増加しています。そして今も昔も変わらないのが重力を忘れてしまう事故。地球には重力があるから物は落ちるのですが、この当たり前の事実を疎かにし、看板などが落ちて怪我をさせてしまう。ヒヤッとした経験が次のリスク回避につながりますから、ぜひ経験の少ない若い人ほど経験豊富な方々のアドバイスを求めていただきたい」。

また、情報収集もリスク回避のために欠かせない。特に自然災害は情報収集によって回避できる可能性が高まるという。さらにその際、中止という決断も時には必要だろう。中止した場合、中止情報をいかに来場者に告知するか、そのタイミングや情報の内容を誤るとクレームに変わってしまうため、情報の出し方も大事なポイントだ。

質も内容も千差満別のイベントであるがゆえに、リスクの洗い出しとリスク回避のための事前準備は尽きることがない。大変な労力である。しかし、リスクマネジメントを心がけてイベント運営をすることは、事故の発生率を下げるだけでなく、クライアントとの信頼関係を生み、結果として次の仕事につながる大切なファクターと言えよう。