寄稿 ポストコロナ:展示会・イベントはどう変化するか? 寺澤 義親 氏

出展者・来場者は減少し、規模は縮小するか:
大規模展示会・イベントは感染防止として、3密回避とソーシャルデイスタンスが求められるため、難しくなるのではないか。コロナが終息しても当面は不特定多数の人が大勢集まることを避ける傾向が残ることから、大規模イベントや過密になるイベントは避けられることになり、出展者・来場者が減少することが見込まれる。

また、これまでと比較して外出の意義を追求することや、移動距離の長い旅行を避ける傾向も残り、来場者も減少してイベントの規模は小さくなる。同様に大きな競技場・アリーナでのスポーツイベントやコンサートも新たな感染防止策が求められることになり、これまでと同じスタイルでの開催・運営は難しくなるのではないか。ここでも開催・運営規模の縮小が現実的対応としては考えられる。
その結果、展示会やイベントの規模は、おしなべて縮小する可能性が高くなるのではないか。

経費が増加する中で収入・収益が減少して収支は厳しくなるか:
これまでと同じ規模を維持しようとすると、使用スペースを拡大する、または分散会場での同時開催が考えられるが、その場合は経費増につながる。その結果、主催者・興業者の収入と収益は減少する可能性が高い。

例えば、会議場の参加者について2mの距離を確保して計算すると、これまでの実質収容人数の14%~16%程度しか収容できないとされている。これまでと同じ人数を確保するには大きな会場に変更するか、リアル会場にオンライン会場を組み合わせざるを得ないが、感染防止対策の経費も含めて相当な経費増となる。
国内の劇場経営者によると、これまでの収容者数100人を感染防止で30~40人に絞ると採算を取るのが難しくなり、経営が非常に厳しくなるという。
国内の展示会では、まだシミュレーションをしたケースを聞いていないが3蜜対策を考えると、出展ブースの間隔を開けて小間通路、商談・歓談スペースも広めに取ることになるので、展示ホール内での出展ブース数は減少して規模縮小につながる。

韓国で開催された「MBC Construction Expo」(5月8日~11日、KINTEX)では、出展ブースの間隔を最低4m以上としており、出展者数の変化は不明だが、ホール数は昨年の5ホールから2ホールと規模は縮小。しかし来場者数は予想に反して昨年の10万人から4.5万人とほぼ半減にとどまった。
全体規模を広げないで一人当たりのスペースを広めにするためには、来場者数を制限するか、これまでと同じ出展ブース数を確保しようとすると経費増になるが、その場合は分散会場とするか、会期延長など時間調整の方法しかない。これまでと同じ規模のスペースを確保しても出展者数は減少するので、収入・収益は減少する可能性が高い。その場合対策としては、新たな企画で出展料や参加料を上げなければ、感染防止経費の増加もあるため、収支が厳しくなるのではないか。

寺澤 義親 氏
1973年4月にジェトロ入会後、アジア事業、海外調査、内外の展示会、博覧会業務を多数経験。海外はシカゴ、トロント、シンガポールに勤務。2010年6月ジェトロ退職、幕張メッセ 常務取締役に就任。2010年から日本展示会協会国際化委員会副委員長(~16 年)、アジア展示会コンベンション団体連盟(AFECA)の理事・副会長(~2015 年)、2011 年から 2014年まで国際見本市連盟(UFI: The Global Association of the Exhibition Industry)の理事(Member of Board of Directors)に就任。現在、日本イベント協会 理事・主席研究員。