照明実施設計

特集 視覚コミュニケーション/展示会照明計画の基礎知識
照明基本3計画の内容

照明実施設計

照明基本3計画で物理的、予算的、施工時間などの検証が実施され、それらを基に常にディスプレイデザイナーと共に実施設計に移ることになる。

〈設計時の実施項目チェックリスト〉

・光の出る角度・距離の確保

・ディスプレイ素材の光の反射率、透過率の確認

・照明器具周辺の環境温度と安全対策

・上記、物理的三条件に適合した器具の設定

・全体ディスプレイ意匠と照明器具意匠の設定

・物理的、意匠的な両条件下での器具の選択

・プレゼンテーション演出にそった照明器具の設定

・プレゼンテーション映像の演出にそった照明器具の設定

・ディスプレイ、プレゼンテーション演出、映像演出にそった照明器具の配置設定

・意匠を再優先した器具の取付け方法と安全対策

・配線処理方法の意匠化と安全対策

・調光器、コントローラーの設置スペ-スと照明オペレーターの操作スペースの確保

・バックヤードでの安全対策

・最終設営スケジュールと照明実施設計の総合的ボリュームの検証

・設営期間中の深夜作業と宿泊予算の最終的確保

以上のような項目を基に照明実施設計を行ない、事前準備段階をむかえる。

また下記の照明シミュレーションも交えクライアントにプレゼンテーションを同時進行で行ない実施設計に結びつける。

〈照明シミュレーションチェックリスト〉

・未経験素材の実物による試験照射

・特殊形状、新型システムなど未経験形状の場合、実機による照明器具の取付け方法の確認

・照明CGシミュレーターによる検証

・照度計算

・什器などの内蔵する照明器具の実器による照明効果テスト ・演出照明の実機照明効果テスト

・映像、音響、照明、各ハードの時間軸における同期テスト

・新規開発照明手法の照明テストとプレゼンテーション

このような照明デザインフローによって現場設営作業に移行することになる。

しかし、展示会においてこの照明デザイン手法を取っているケースは数少なく、冒頭で述べたように、現在では専門知識を必要とし専門職となっている照明デザインの仕事をディスプレイデザイナーが兼務してしまうことが、残念ながら多く見受けられる。

また、照明スタッフ側も、基礎的な光学知識を身につけず、経験値のみでデザイン作業を行なうケースも多い。各分野の照明デザインに対する意識改革をへて、すべての展示ブースが予算に応じた高品質な照明が行なわれる日を待ち遠しく思う。

今後の展示会ビジネスにおける照明デザインの価値観の進展に期待する他にない。