めまぐるしく変わる配信イベント環境と現在地

日本映像機材レンタル協会(JVRA)は10月2日、「第41回総会」を開催した。従来の総会は年に一度、全国各地で開催していたが今回は新型コロナの影響を受けオンラインで実施した。新型コロナによるイベント減少で影響を受けている企業は多いが、中でも豊富な映像音響・配信機材を有するJVRA 会員は、リアルイベント減、オンラインイベント増という極端な変化に挟まれ最も対応力と判断力が求められる特殊な企業群であると言えよう。今回はJVRA 事務局・高山英樹氏とオンライン総会の機材オペレーションを担当したタケナカ・植木誠氏に配信イベントの現状を語っていただいた。

EventBiz vol.21 掲載)


配信イベントのあり方とプラットフォームの選び方

高山 今回われわれが開催した総会もそうですが、オンラインで開催するイベントはリアルイベントの代替手段として位置付けられやすい。それゆえ、従来やってきたことをオンライン上でできないかという発想になりますし、使用するプラットフォームも、その目的に見合ったものになりがちです。今回は配信イベント向けの「Zoomウェビナー」ではなく、あえて「Zoomミーティング」を使用しました。本来、主催者側から視聴者側を制御しやすいのはウェビナーの方ですが、これまで開催してきた総会の大きな魅力は年に一度、全国から会員企業が集まり、実際に顔を合わせて交流できること。
今回はその点を重視し、ミーティングで1つの画面上に参加した皆さんの顔が映ったり、手を振ったりしてコミュニケーションできた方が開催意義に合っているだろうと考えました。

植木 Zoom以外にも配信用プラットフォームは数多く存在します。実際の配信イベントでZoomを使用するケースは多いですが、「Microsoft Teams」や「Cisco Webex」も比較的よく使われています。機能差で選ぶというよりは、主催者側が普段、社内会議をする際に使うツール、つまり使い慣れているものをイベントでも選ぶことが多いですね。
プラットフォームによっては商用利用のイベントではロゴを使用しなければならないレギュレーションがあったりもするので、そのあたりも選定の判断材料になります。

高山 逆に社内の規約などでZoomを使用できない企業もあります。既存のプラットフォームはたくさんありますが、今後はさらに増えていくでしょう。そのような中では、何を使うべきかという議論がなされるでしょうし、これからは例えば「Zoomはアンケート機能が簡単で良いですよ」とか「配信を見てもらうだけならYouTube Liveの方が画質の面で有利ですよ」といったニーズに合ったアドバイスができるよう、われわれの業界は特に新しい情報を吸収していかなければならないと思います。

 

配信イベントでありがちなトラブルとその対策

高山 今回の総会で使用した資料は基本的には動画を使わず、パワーポイントのスライドを切り替えるかたちで進行しましたが、その際、動作が重くなってしまい見栄えにも影響するためグラフのアニメーションも避けました。ほかにもスライドの文字は大きく太めのフォントを使うことも大切。Zoomミーティングを使用したことも関係するのですが、どのような画面レイアウトで視聴するかは、結局は視聴者側の端末次第なので。

植木 話さない人がミュート(消音)にすることは基本的なポイントです。これは大きい音が鳴ると反応して画面が切り替わるモードがあり、それによるトラブルを防ぐためです。
また、ハウリングはスピーカーから出る音をマイクが拾うことが原因で発生するので、イヤホンをすると防げます。

高山 運営上、コールセンターを設置することもトラブル回避には有効です。今回は電話番号を3回線用意し対応しました。リアルイベントにも言えることですが、開始時刻になっても参加者や出演者が来ないときに一番確実なのは電話をかけること。オンラインイベントは特に参加者のITリテラシーに左右されるため、より必要性がありますね。

あとはちょっとした工夫ですが、PC のインカメラやウェブカメラを使わず、ビデオカメラを使うことをおすすめします。ウェブカメラと呼ばれるものは顔さえ分かれば及第点というレベルで、そもそもカメラとしての性能を追求していないものが多いです。例えば会社の備品でハンディカムをお持ちの方は変換アダプタなどを用意し使用することで映像のクオリティは格段に上がります。
はじめは配信イベント自体の物珍しさから、顔さえ映っていれば満足ということもありましたが、慣れてくるとお客さん自身も次第に「もう少し何とかならないのか、もっと質の良い内容にしたい」と感じてくるようです。そうなったときが、われわれのような専門業者の力が最も発揮される場面なのでしょうね。

 

 

 

 


第41回総会(オンライン)での主な使用機材

日本映像機材レンタル協会 公式HP