非接触型の音響サービス「oto rea」がもたらす新たな体験/乃村工藝社

世界は音にあふれている 。
仕事をする時も、食事をする時も、寝ている間でさえ私たちは常に何らかの音に包まれている。
音が人に与える影響はさまざまだ。お気に入りの音楽を流せば気分が良くなるし、虫の羽音1つで集中をかき乱されることもある。音は私たちの生活に彩りを与えてくれる。
そんな音の可能性をもっと広げたい。oto rea(オトリア)は、そんな願いを実現する。

 

音による空間演出が 体験の幅を広げる
oto rea(オトリア)は空間演出の幅を広げる、新しい非接触型の音響体験サービスだ。

利用者がヘッドフォンを装着し、タブレット端末を持って移動すると、特定の位置に到達した際や、立つ・座る・向きを変えるといった動作に合わせて立体音響が流れる。博物館や美術館であれば、展示物やボタンに触れなくても見るだけで解説が聞けるし、アミューズメントパークであれば、BGMやSE、セリフによって今まで以上にドラマティックな体験が可能となる。

 

開発は乃村工藝社グループのイノベーション・ラボラトリーNOMLAB(ノムラボ)と、次世代コミュニケーションツールを開発する東大発のAR/MRスタートアップGATARI(ガタリ)が共同で行った。

GATARIが開発・提供するMixed Reality技術を活用した音声ARプラットフォームAuris(オーリス)を活用していて、タブレット端末の画像認識により音声情報が埋め込まれた空間情報を取得する。

乃村工藝社のプロデュース力と GATARIの音響技術を融合
「プロジェクトは2020年3月からスタートしました。ちょうど新型コロナウイルスの影響が色濃く出始め、非接触が重要だと言われ始めた時期です。これを受けてプロジェクトチームでは体験を制限するのではなく、ニューノーマルな方向へ拡張させようとなりました」

そう話すのはNOMLABマネージャーの田中摂氏。NOMLABが掲げるデジタルイノベーション×場づくりというテーマのもと、これまであらゆる角度から空間体験の可能性を探ってきた。

「今までの空間体験を振り返ると、インスタレーションの多くが視覚に比重を置いて作られています。ニューノーマルで注目されているオンラインイベントも同様です。そこで乃村工藝社がこれまで培ってきた空間プロデュース力・施設運営ノウハウと、GATARIの音響技術を融合させることで、聴覚の比重を上げ新たな体験価値を生み出すことができないかと考えました」。

体験にストーリー性を持たせ 重要文化財などでも活用を
プロジェクトマネージャーであるNOMLABの津本祐一氏は「ゲームの世界を現実に持ってくることができたら、私たちの世界はもっと楽しくなるんじゃないか。例えば、歩く道によってBGMが変わったり、課題をクリアしたらレベルアップのSEが流れるとか。oto reaはそういったところから着想を得ています」と話す。

「これまでの施設でも音は使われていましたが、そのほとんどがスピーカーによるもので、複数人を対象としていました。oto reaは個人利用かつ非接触型でコロナ禍における課題をクリアするとともに、空間体験に強いストーリー性を持たせることができます。工事が不要で景観を損なわず、音が混ざり合う心配もないので、重要文化財などでの新たな体験も見込まれます」

コロナ禍以降の新たな価値観を パイオニアとして追求していく
oto reaの開発はコロナ禍ということもあり、そのほとんどがオンラインで行われた。

「新型コロナウイルスという目前の危機が生まれたことで、それを乗り越えるためのアイデア出しが活発に行われました。各々が自分の作業に集中できたおかげもあり、開発は順調に進みました」と津本氏は振り返る。

今年9月には乃村工藝社内RESET SPACEにおいてプロトタイプのデモンストレーションも行われた。社内外約120人が体験し、その9割以上から高い評価を得た。

今後はデモンストレーションを踏まえ、ブラッシュアップとコンテンツ開発に着手していく。

「新型コロナウイルスによって体験価値は大きく変わりました。終息後は、コロナ禍以前の体験では満足できなくなっているでしょう。乃村工藝社は、空間体験のパイオニアとして、新たなリアルの価値を追求し続けていきます」と津本氏は語る。

田中摂氏(左)と津本 祐一氏(右)

本記事は『EventBiz Vol.21』に掲載した内容を抜粋・編集したものです。