座談会「ビジュアル空間をつくるプロフェッショナルのシゴト」その3  ~展示会とMICEアーカイブスPart1~


日本映像機材レンタル協会 & ピーオーピー合同企画

座談会「ビジュアル空間をつくるプロフェッショナルのシゴト」 その3

(『見本市展示会通信』2011年11月15日付号掲載の座談会を再録いたしました)

業種を超えた交流で
互いをスキルアップ

中田 いろいろな道具の話が出てきましたけど、ディスプレイ会社として、そういった知識とか普段からの接し方ってどのように取り組まれていますか。

 今日はせっかくこういう機会をいただいたので、うちのプランナーやデザイナーに、どんなことを聞きたいか取材してみたんです。
共通して出てきたことは、最新の映像機器やそのノウハウに接する機会が欲しいということでした。
やっぱり、どんな表現をするか考えることと両輪で、ハードウェアの知識などもわかっていないと、どこまでチャレンジできるかが見えてこないので。そんなと き、プライベートショーなどでみなさんとのコミュニケーションが図れるような機会がもっとあれば、という希望が多くて。行きたかったけど結局行けなかった とか、忙しがって言い訳するこちらにも問題もあるのですが。

中田 プライベートショーは、こちらの3 社 も時々やっていますが、業界全体としてはそれほど多くないような気がします。光和さんが毎年1月にやっているプライベートショーは、業界展と呼べるくらい メーカーの側も力を入れていて、たくさんの機材が展示されています。小島さんの会社も今年5月に内覧会を開催しましたよね。

小島  グループの設立30周年を記念したイベントだったのですが、何を大事にしたかというと、モノを見せるのではなく、「ぼくたちはこれを使って何ができるか」 という視点です。みなさん、モノは大体わかると。値段が高いのも知ってる。だけど「これ使ったら何ができるのかを知りたいよね」っていう声に応えることが コンセプトでした。結果として、その部分で高い評価をいただいて、うれしかったですね。

 そうですね、彼らは使い方の提案が見たいんです。

小島  プチプライベートショーみたいなのを各所でできれば。

 そう。ワークショップっていう意見もでました。数人でいいので、会社、業種をまたいで、まさに今 日みたいな機会が頻繁に組めると、互いにいろんな情報が交換できて、それが新しい表現のアイデアやチャレンジにつながる。望めるならそこに、展示会なら出 展企業の担当者さんも一緒に話ができたらいいなと思いました。やっぱりエンドユーザーが興味をもつと、ビジネスの話も早いですから。

中田  JVR協会では、毎年7月に「業務担当責任者会議」という現場の人たちの交流会を開催しています。毎年取材させていただいてますが、ヨコのつながりがしっ かりしている業界だとつくづく感じます。あのような場を、業種を超えてつくることができれば、成果は大きいでしょうね。

 特に映像機材では、日本のメーカーは世界の最先端にあるのだと思いますが、もしかしたら表現の方法だったりクリエイティブの部分というのは、果たして本当に世界最先端かというと、遅れているかもしれない。
そこで、空間、映像、ハードなど、それぞれのスペシャリストの経験やスキルが融合することで、新しいウィットな表現が生まれるのだとすれば、やはり職種、業種をまたいだコミュニケーションをもっと活性化させる必要があると感じます。

中田 情報交換以上の、それぞれのスキルアップにもつながる場にしたいですね。

長崎  海外アーティストのライブステージには、照明と映像を一人でこなすオペレーターがいます。日本は映像、照明それぞれがプランを出して、それをディレクター というか演出家が真ん中でまとめるというのが普通です。これを一人でこなすのですからすごいことですが、つまりそれを技術的に可能とする機材もソフトもあ るわけで、いずれ日本もそうなるはずです。
ただ、概して映像のオペレーターは、昔は信号をきちんと出す技術というか、電気的な理解のなかで仕事をしていました。照明はどちらかというとアートの世界 ですので、いかに雰囲気を表現するかというセンスが大切です。私からすれば違う資質に思えるので、このスキルを両方兼ね備えるというのは、かなり難しい気 がします。

 もともとクラブシーンでVJ(ビデオジョッキー)をやってた人たちが、照明と映像を ミッ クスして、リアルタイムで現場で仕上げるということをやってきたんですね。こういう、ミックスダウンができる感覚をたまたま持ってたのが、90年代以降、 日本ではずっと廃れてたVJの人たちなんですよね。ようやく時代が変わってきて、その感覚をもうちょっとビジネスのレベルまで引き上げられれば、イベント の世界も変わるかもしれませんね。
長崎 おっしゃる通りで。奈良のビームペインティングを仕切ったのは元VJのスタッフなんですよ。

中田 小島さんが取り組まれているのも、こういうことなのでしょうか。

小島  そうですね。クリエイターとかデザイナー的な発想を一人のオペレーターが身につけるのは難しいですから、いろんな業者が合わさってイベントをつくっている のが日本の現状だと思います。それを私は社内のスタッフでつくろうとしていて、だいぶなんとかできるようになりました。ただ、それもいずれ通り一辺倒とい うか変化がなくなってきてしまうので、そこは新しいスタッフを入れて、常に進化させないと伸びないと思っています。

現場に立ちはだかる
様々な規制の厳しさ

中田 次に業界というか、みなさまが仕事をするうえで感じている問題点、改善したい点というのは。

  日本の展示会場、街もそうなんですけど、明るすぎるんですよね。そのためにプロジェクタの輝度を上げて予算が足りなくなるとか、クライアントとやりたいと 思っていたことが、とても中途半端に終わってしまうことがあります。プロジェクションマッピングも明るいと天井を建てなければならなくて、消防法だの予算 だので諦めざるを得ないということがたくさんあります。

戸村 会場明りが暗い状態での表現っていうのも、展示会の中に取り入れたいですよね。確かに日本の展示会は、明るい環境で見せる手法ばかりですね。ビジュアルがキレイとか深みがあるとか、そういう見せ方でブースの訴求力を上げることもできるはずです。

  「東京ゲームショウ」や「Inter BEE」など、照明を落とした展示会もありますが、映画館とかポスプロのスタジオに入ったときのようなジトッとした暗さが、ちょっとワクワク感を演出して ますよね。主催者は演出という部分にもっとこだわって、「展示会って本当に効果あるの?」って言われがちな状況に一石を投じてみてはと思いますね。

中田 全体的な統一感っていうのは主催者の裁量で、もっと演出できる余地があるのかもしれないですね。

 規制が厳しいのもなんとかならないですかね。またマッピングの話ですが、条例だとか申請だとか、クリアしなければいけない問題がたくさんあって、結局許可が下りずにできないことが多いです。

中田 長崎さん、先ほどの「ならファンタージア」はかなり大がかりなイベントだったので、開催までにはいろいろな面倒なことがあったのではないですか。

長崎 あれは、街中や公道から外れた敷地内ですから、周りの照明も落としていいってことだったので、わりと自由にやらせていただきました。でも何がこれほど味方したかというと、主催が県だったということではないかと。

中田 ああ、行政が動いてくれれば警察も消防も話が早いんでしょうね。こうなるとマッピングの成功の鍵は政治力ですか(笑)。

長崎 これは恵まれた事例です。これが街中のビルだったりすると、ある程度話が進んで予算も下りて、いろんな手続きをクリアしていても、最後に警察の許可が下りなかったとかで頓挫してしまった案件はいくつもあります。

中田 実施できただけでも恵まれてるということなんですね。

長崎 そうです。

中田 小島さんも、そういう現場を。

小島  テーマパークの中でのマッピングは、やはりスムーズに進行しましたよ。でもビルでやったときは、できるにはできたけど、周りの照明は一切何もしてくれませ んでしたね(笑)。だから、ものすごい明るいプロジェクタをもっていくしかない。で、それがコストに跳ね返ってしまいますから、クライアントには申し訳な かったですよね。

中田 結局コストに跳ね返ってしまうんですね。戸村さんもそういうご経験は結構・・・

戸村 LEDディスプレイを街頭で使うイベントで、警察から「信号と間違えるドライバーがいるから輝度を落とせ」と。

中田 ・・・説得する気も失せてしまいますね。

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その4  震災、若いチカラ…映像に何ができるか / 本物が持つオーラをたくさん見てほしい

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その1  ビジュアルの比重増す展示会での空間づくり
その2  リアルとバーチャルいかに使いこなすか / 機材の進化が生む新しい映像の世界

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