国土交通省は、外国人に与える在留資格「特定技能」において、バスやタクシーの運転手に求める日本語能力の要件を緩和する方針を明らかにした。これまで求めていた日本語能力試験(JLPT)の「N3」レベル(中級)から、「N4」レベル(初級)でも入国を認めるよう見直しを進める。
背景には、深刻な運転者不足がある。新型コロナウイルスの影響を受けた人員の減少に加え、長時間労働・低賃金といった業界特有の労働環境も響き、バス・タクシーの運行維持が困難になっている。
日本バス協会の試算によると、今後も年間数千人のバス運転手が減少していく見通しだ。
こうした状況を受け、政府は令和6年3月にバス・タクシー業務を「特定技能」の対象に追加。利用者対応や緊急時のコミュニケーションが求められるため、当初はN3以上の日本語力が条件とされていたが、今後はN4でも可能とする。N4レベルの場合は日本語サポーターの配置が前提となるが、離島や半島など利用者が限られ、道路環境が比較的単純な地域では、サポーターなしで単独乗務も認める方針だ。
離島における交通事故件数は全国平均よりも少なく、事故発生時の対応も複雑ではないとされる。また、自賠責保険料も離島の方が低く、安全性の裏付けともなっている。
政府は、運転技能や接遇力については「特定技能評価試験」「新任運転者研修」などの制度を通じて確保する方針を示している。日本語能力の要件緩和により、より多くの外国人材の参入が可能となり、深刻な交通空白の解消につながることが期待される。