座談会「ビジュアル空間をつくるプロフェッショナルのシゴト」その1  ~展示会とMICEアーカイブスPart1~

日本映像機材レンタル協会 & ピーオーピー合同企画

座談会「ビジュアル空間をつくるプロフェッショナルのシゴト」 その1

(『見本市展示会通信』2011年11月15日付号掲載の座談会を再録しました)

出席者(順不同)
●(株)博展 取締役 マーケティング部長 鷲 禎弘 氏
●(株)映像センター イベント事業部 第一営業部 次長 戸村 栄太 氏
●マックレイ(株) イベント・コンベンション営業部 部長 小島 正詩 氏
●(株)タケナカ 専務取締役 営業本部長 兼 東京支店長 長崎 英樹 氏
●司会:ピーオーピー・中田 昌幸
※所属・役職は収録当時のもの

めざましく進化する映像機器とこれらを駆使して、印象的なビジュアル世界を創り出すクリエイター。彼らが創り出しているのは、日常とはかけ離れた空間そのものであり、人と人とのコミュニケーションである。もはや映像は、空間づくりの主役と言えるほど重要な、情報の媒介インフラとなっており、イベントやMICEに関わる私たちは、そのチカラを理解したうえで、次の仕事で使える映像の可能性を、常に考えていたい。そのヒントとなるような座談会を企画した。

ビジュアルの比重増す
展示会での空間づくり

中田 本日はお集まりいただきありがとうございます。
まずはじめに、ご自身の仕事と会社の事業についてご紹介ください。

戸村 私は入社してちょうど20年になります。現場設営とオペレーションに長く携わってきました。
会社は歴史的には展示会などの企業イベントをメインフィールドにして成長してきました。昔は、展示会のブースで映像やスライドを使う出展企業はほとんどありませんでしたが、そうした時代に数少ない出展者がチャレンジしてくれたことによって、映像による新しい表現が知られるようになり、われわれの業界が伸びてきたのだと考えています。その頃は、ブラウン管のテレビや音響機器を何台も台車に積んで、それをたった2人で会場に運び設営するなんて仕事ばかりでした。まさに展示会は肉体労働でした。
最近では、イベント、学会、コンベンション、製品発表会、街頭キャンペーンなどフィールドがひろがっていて、展示会とそれ以外の仕事は半々ぐらいではないかと思います。現場のスタッフにはこうしたカテゴリー分けは重要ではなく、企業のプロモーションをサポートしているという感覚ですね。

小島 弊社は伝統的に、ライブや企業イベント、式典、セールスプロモーションなどショーテクニカル系の仕事を得意としてきました。学会や製薬メーカーさんのシンポジウムなどコンベンション系が増えてきたのは7年くらい前からです。いまでは、1小間の展示ブースにプラズマディスプレイ1枚という仕事から、ドーム球場を使うような大型ライブまで、規模も分野も幅広く対応しています。
私も戸村さんと同じように、現場の仕事は一通りこなしてきましたが、いまはマネジメントする側なので、新しいこともつくりだそうとしています。その第一歩として、医療機器メーカーなどに向けて、3D映像や介護ビデオの製作、それらを上映したり販売したりする、メディカル・メディア・ソリューションという部署を立ち上げました。事業部を超えてスタッフを集め、これからいろんなことにチャレンジしようとしているところです。

長崎 弊社は35ミリ映写機のメーカーとして創業して、今年は80ン年になります。あまりに古くて私も詳しいことは知らないのですが(笑)、販売だけではなく、公民館などに機材を持って行って、出張映写のようなことをしていたと聞いています。これがレンタルビジネスのはしりだったのではないでしょうか。
現在、主要事業のひとつとなっているコンベンションや学術会議に力を入れ出したのはずっと後になってからですが、その後イベントとか展示会もバランスよく増えてきました。自分たちからいろいろなフィールドに行こうとしたわけではないのですが、お客さまの求めているものをできるだけ集めよう、提供しようという姿勢で成長してきた会社だと思っています。
私自身は経営の側にいますので、社員が現場で忙しい分、違う視点とか何か新しいことを見つけてビジネスにつなげる責任があると思っています。

中田 さて、今回は映像の特集ですが、ディスプレイ会社にいる鷲さんに来ていただいたのは、空間づくりの視点からも映像の世界を見てみたいと思ったからです。ディスプレイ会社の役割は、あらゆるイベントやコンベンションにおけるコンセプトづくりから企画・設計へとひろがり、人の動作や心理までに踏み込んだコミュニケーションビジネスへと発展しています。そうしたなかで、空間づくりにおけるビジュアル演出は、欠くことのできない重要なファクターとなっています。
ディスプレイ会社といえども造型の知識だけでは空間づくりが語れない時代に、今後ビジュアルはどのような役割を果たし、取り入れられていくのか、そんなことをお聞きしたくてお呼びしました。

 そうですね、実際、弊社の売上比率を見ても、運営関係の仕事が多くなり、本来の造作関係は低くなっています。では、運営とはどういうものかというと、弊社では販促イベントに代表されるような、企業の売上アップをサポートするための手段というふうに捉えています。
つまり、企業が伝えたいメッセージを最良の方法で、正確に効率よく、しっかりと顧客に伝えることが目的であり、その表現の方法は必ずしも造作でなくても良いわけです。そういうときに、映像機器を使ったビジュアル表現には、訴求力の高さを実感しています。

中田 最近はどんなお仕事をされていますか。

 私は博展に営業職で入って、次に企画やプランニングのセクションに移ったのですが、みなさん同様、最近は直接現場に携わることは少なくなりました。そこで、私も小島さんのように社内に新しい部署をつくって、いまの時代に合わせたチャレンジをしていこうと活動しています。
最近ですと、AR(Augmented Reality=拡張現実)技術を使ったウェブ動画の制作や、プロジェクションマッピングを用いたコンテンツやシステムの商品化に取り組んでいます。個人的には今年8月に「日本プロジェクションマッピング協会」の立ち上げに協力をしているところで、この技術の可能性には大いに期待しています。

 

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その2  リアルとバーチャルいかに使いこなすか / 機材の進化が生む新しい映像の世界