イベント・展示会領域でトップの会社に

イベント・展示会領域でトップの会社に

(株)博展 代表取締役社長 田中 正則さん

ブース装飾だけにとどまらない「コミュニケーションデザイン」と若い力を武器に、急成長を遂げた(株)博展。2008年2月にはヘラクレス上場も果たしたが、現在は不景気も影響し、その成長は足踏み状態。しかし、巻き返しを図るべく、6月よりリクルートスタッフィング情報サービス(株)の代表を務めていた田中正則氏を社長に招いた。新たなスタートを切った同社の取組みを、新社長の田中氏に聞いた。

新体制で収益構造の確立へ

――6月の株主総会で正式に代表取締役社長に就任され、前社長の田口氏は代表取締役会長に就任しました。ダブル代表となった新体制の特長を教えてください

田中 対外的な代表の役割は関係業界とつながりが強い田口が担当し、私は今々、内部固めにウェイトを置いています。重要事項は二人で決定しますが、社外と社内で主な役割を分担しています。
博展は若い力で成長を遂げた会社ですが、その反面、マネジメントなど経営力が手薄になっていました。
私は成長期にある企業の経営に少なからず関わってきた経験があります。若い力のベクトルがプラスに向くように、経営戦略、経営マネジメントを手厚くし、人材育成にさらに重点を置いて、より収益が上がる体制を築いていきたいと考えています。

――社長就任から3か月が経過しましたが、いかがでしょうか

田中 ディスプレイ業界も厳しい状況は続いているようですね。当社も厳しいことに変わりありませんが、社員は上を向いて、営業、デザイン、制作ラインともに、フル稼働でがんばっています。
その甲斐あって、案件数は減っていません。
ただ、単価が下がっている影響で利益率は落ちています。なんとか社員のがんばりを収益に還元できる知恵を絞り、社員を幸せにする会社にしたいと思っています。

――外から見ていた展示会業界と、内から見た業界に違いはありますか

田中 この業界に入る前は、市場規模が縮小し、厳しい業界だと聞いていました。
ですが、中に入ってみると必ずしもそうでもなく、展示会の数はそれほど減っているとは思えませんし、出展を取りやめる企業もそれほど多くない。また、来場者や会場の質、販促プロモーションにおける展示会のポジションも落ちてないと思います。
展示会は顧客と顔を合わせ、コミュニケーションを取れる強力な媒体。今後も重要度は高まっていくはずですし、重要度が増すように貢献していきたいです。

――展示会のディスプレイ市場をどう捉えていますか

田中 展示会の施工などハードの部分は、ニーズはあっても価格的に苦しい状況で、これは今後も続いていくでしょう。ただ、企画やデザイン、コンテンツ制作といったソフトの部分は伸びてくる。そこで顧客のニーズに応えられれば、伸びていけます。微力ながら業界の先を走り、業界をリードするような会社になっていければと思います。

――コミュニケーションデザインについてお聞かせ下さい

田中 展示会を軸に、印刷物やWEB制作などセールスプロモーション全般をビジネスにつなげるという「コミュニケーションデザイン」のコンセプトは、3年前に田口が打ち出し、会社が成長していく原動力となりました。
そしてビジネスの枠を広げたことにより、ずいぶんマーケットが見えてきました。ですが、その市場に見合った戦略の部分が不足していた。
これからは、市場を見極めながら自らのできることを磨き、いかにして商売につなげていくかが勝負。博展の強みを生かし、商売になる戦略をつくり上げることが私の役目です。

――収益体制の確立に向け、何が求められていますか

田中 一つは、「収益概念の改善」です。現状では、社内にはシビアなコスト感覚が足りていないと感じています。粗利を重視していかに効率的に働くか。木工やシステム部材など、ハードの部分が低価格になるのは、この不況のもと、ある分仕方がないかもしれません。ただ、企画・運営やコンテンツ制作のノウハウは高く売れるはず。
他社にない当社の強みは、堂々と提示していけるようになりたいです。
また、ハードではないソフトの部分で利益を得るには、お客さまの市場、商売の仕組み、ニーズなどをきちんと把握していなければなりません。
そこで、下半期から体制を変更しました。これまでは、営業・デザイン・プランニング・制作といった職種別の組織体制に分かれていましたが、全社が市場に目を向ける必要があるため、下半期からはマーケット別の部門に分けることにしました。
お客さまの要望は、より専門的になってきている。マーケット別に部門を分ければ、業界ごとに蓄積させた専門的なノウハウを次の仕事に活かすことができるのです。

――制作部門に変化はありますか

田中 改善する方向性が二つあります。今後、現場の木工の施工作業は、当面、今までのようにはふえていかないでしょう。
作業は減ったとしても、クオリティの高いものにこだわっていくことや、木工だけでなく、システム部材の施工やその他の新しい素材の装飾、演出の黒子役など、制作部隊ができる範囲を広げていくことが必要です。
もう一つは素材の選択を工夫するなど、目利きの部分を強くすること。これまでやってきたことに変化や工夫を加え、自分たちの仕事の強みを発展させなければいけません。

「人材育成」「エコ」「安全対策」に注力

――新卒採用も多く、人材育成に力を入れられています。新卒社員が会社に貢献できるまで、何年ぐらいかかるのでしょうか

田中 個人差もありますが、平均すると3年から4年でしょうか。正直まだ私には明確にはわかっていません。ただ、優秀な人は半年後でも活躍を見せています。2年目、3年目になるとエース級に急成長を遂げる人もいる。
新しい技術やサービスが次々と出てくるなか、顧客のニーズを正確に把握し、それに見合った提案をしていく力は、単純に社歴を重ねたからといって身につくものではないかもしれません。
若い力がベテランを上回ることもある。若くて優秀な社員にチャンスを与えられる環境にすべく、人事制度やマネジメントの仕組みも変えなくてはいけないと考えています。

――エコや安全の取組みに力を入れていますね

田中 弊社では、「廃棄物量の削減・リサイクル推進」、「法令遵守」、「環境教育」の三つの基本方針をもとに、環境問題に取り組んでいます。
「エコプロダクツ2009」では、弊社が企画・デザインをしたブースが、「環境配慮ブース」に選ばれました。また、「人とくるまのテクノロジー展」では、ブース素材の100%リサイクルとカーボンオフセットを提案し、採用されました。こうした環境への取組みは、今後も率先してやっていきたいです。
安全対策については、当社が力を入れてきた取組みです。これまでヘルメットの着用やカラーコーンの設置など、徹底して行なってきました。こうした現場力は博展の売りになっています。

――MICE分野に仕事を広げることは?

田中 現状は手探りの状態ですが、会議案件など、さまざまな仕事が入りはじめていますし、MICE領域にはぜひ携わっていきたいと考えています。

――今後の目標をお聞かせ下さい

田中 身の丈以上の志かもしれませんが、イベント・展示会領域でトップの会社になることを目指しています。いまはまだ収益体制をつくり上げている段階ですが、少しでも早く成長投資を行なっていきたい。その先には、サービス領域の拡大や各地域への事業所設立、海外に展開することも見据えています。(了)

「見本市展示会通信」2010年10月15日号掲載