「安全・安心な展示会を東京から世界へ」東京観光財団がPR支援事業を実施

安全・安心な展示会を東京から世界へ

東京観光財団 コンベンション事業部 次長 兼 誘致事業課長 藤村博信 氏
誘致事業課課長代理(企画調整担当) 曽根豊太 氏
誘致事業課主査 大村直子 氏

東京観光財団(TCVB)は今年4月より、新型コロナウイルスの影響を受けMICE開催において安心して参加できる環境づくりが重要となっていることから、都内展示会の安全・安心に関する取組みのPRを支援する「安全・安心な展示会PR支援事業」を開始した。そこで、事業内容についてTCVBコンベンション事業部に話を聞いた。(インタビュー実施=8月20日)

 

東京開催の展示会主催者に広告等情報発信面で支援

―安全・安心な展示会PR支援事業(以下、本事業)の概要を教えてください

大村 本事業は東京で開催される展示会の主催者が海外展示会や業界専門誌等へ安全・安心に関わる取組みを情報発信する際に、その経費の一部を支援するものです。

事業対象者は都内展示会の開催した実績がある、または展示会業界団体に加盟しているもので、対象展示会は都内開催で海外からの来場者を見込む通常開催、またはハイブリッド開催です。オンラインのみの開催は対象外となります。

国や東京都、業界団体等の開催ガイドラインに沿った感染防止対策を行っていることや、国際展示会連盟(UFI)または日本展示会認証協議会(JECC)認証を受けている、あるいは主催者が海外出展者数や来場者数をインターネットなどにより広く情報公開していることも要件に含まれます。なお、これまで第三者認証を取得していない場合、取得に必要な費用も助成対象となります。

―対象事業の期間はどのようになっていますか

大村 今年の5月1日から来年2月28日までの間に実施されたものとなります。広告媒体原本の発行、またはWEBサイト等において広く一般に公開・周知の開始が確認でき、かつその経費の支払いが完了している必要があります。

―助成事業について詳しく教えてください

大村 海外関連展示会ショーレポートや業界紙等における紙面広告、海外関連展示会公式サイト等におけるバナー広告、展示会公式サイト等における「安全・安心な展示会」PRページの新規制作にかかるデザイン費用や多言語対応にかかる翻訳費用等となります。ただし、PRページに関しては単独では受付けておりません。また広告掲出にあたっては「安全・安心な展示会」PR活動に関する内容が、原則として掲出面積の1/2以上あるものとなります。

対象経費は広告掲出費、制作費などで、助成額は対象経費合計金額の2分の1以内、または200万円のいずれか低い方を上限としています。

 

コロナで打撃を受けたMICE 再開時にはすぐさま反転攻勢を

―本事業を実施した経緯について聞かせてください

曽根 TCVBでは2015年からMICE主催者に向けて、国際化支援と称し海外からの出展者や来場者誘致に対する助成を行ってきました。本事業はそれに代わるものとして実施されたものです。東京都としても本件のような形で展示会主催者を支援しようという動きがあります。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が行っているようなバイヤー誘致や、ナショナルパビリオンの誘致とは性質が異なるものです。根底には世界における東京都のプレゼンスを向上させたいという思いがあり、インバウンドの視点から見ても、MICEによる訪日旅客は消費金額も大きく経済波及効果にも期待が持てます。

現在は新型コロナウイルスの影響で渡航が制限されており、主催者もなかなか海外展開に力を入れられていない状況ですが、今秋以降でまた状況が変わるのではないかと考えています。9月1日と2日には改めて助成金についてオンライン説明会を行う予定です。

―新型コロナがMICEにもたらした影響について、どのような認識でしょう

藤村 新型コロナにより、MICE産業は大きな打撃を受けました。インバウンドも壊滅的で、TCVBとしてはMICEを支援したくても、ビジネスが動かずなかなか身動きが取れなかったというのが正直なところです。

コロナ禍2年目の現在、巷ではデルタ株がまん延していて、依然として大変厳しい状況だと認識しています。ですが、一方で海外の動きに目を向けると、欧米ではイベントが再開の動きを見せており、MICEのリアル開催に積極的な姿勢を示しています。そういった動向を注視しつつ、東京もいざ海外渡航が再開となった時にすぐさま反転攻勢に出られるよう、今のうちから準備しておくことが重要です。

 

MICEにはリアルが重要 安全・安心な開催の担保へ

―東京都ではどのようなMICEの課題を抱えていますか

藤村 コロナ禍が始まった2020年の後半からオンライン、あるいはリアルとオンラインをあわせたハイブリッド開催が増えており、MICE施設やユニークベニューにおける設備支援なども行っていかなくてはなりません。また、TCVBでも今年1月に「東京MICE開催のための安全・安心ガイドライン」を策定しました。

曽根 展示会の業界団体である日本展示会協会(日展協)などとも連携を図りつつ、取組みを進めています。現在の主流はハイブリッド開催ですが、MICEの効果を最大限発揮するためにはリアルが重要ですので、ガイドラインを定め安全・安心を担保することは重要だと考えています。

―今後の展望について教えてください

藤村 海外との渡航が困難でも、今できることはあります。まずは国内外に広く情報をすることが大事だと思い、今年7月にはSNSのLinkedInを開始しました。既にユニークベニュー他都内の情報を発信しておりますが、今後も週1回ペースくらいで東京の最新情報等を提供していく予定です。

また、DX時代に対応できる人材の育成や、SDGsに貢献するコンテンツ開発等の取組み、東京ビジネスイベンツ先進エリアをはじめとする地域との連携などにも注力してまいります。

曽根 秋口にはMICE施設のネット回線やWi-Fi、プロジェクターなどを対象とした受入環境整備支援の募集を予定しております。また、冬にはオンラインで人材育成講座を実施予定です。