連載「震災に負けない会議誘致」その1 京都

本連載では、東日本大震災の影響で多くの国際会議が中止になるなか、開催を果たした会議をピックアップし、舞台裏を支えた皆さんからその苦労や開催継続に成功した方法を紹介していただいています。風評被害を最小限に抑える方策を共有し、日本のコンベンション復興を目指しましょう。

連載の初回は、「第23回国際血栓止血学会ISTH2011」、会場となった国立京都国際会館の営業部長苗村淑子さんに寄稿いただきました。

第23回国際血栓止血学会ISTH2011の京都開催について


国立京都国際会館にて7月23日から28日まで「第23回国際血栓止血学会ISTH2011」が開催されました。約80か国から約5000人が参加し、その内80%以上が海外からという、東日本大震災後日本で開催された国際会議としては最大規模のものとなりました。

震災後原発の影響で、他の国際会議同様、ISTH2011 も他国開催検討を余儀なくされるという瀬戸際に立たされました。日本開催再検討の理事会が開催されるまで僅か1週間。先ず、私たちは観光庁長官、京都府知事、市長、JNTO理事長に書簡を依頼し、その間に、学会は、信頼できる機関からの放射能測定データや、海外機関による京都開催リスク評価リポート等の科学的客観的データを準備されました。そして、外交ルートを通してジュネーブ在住の学会理事長に書簡と資料が届いたのは理事会の前日でした。

2002年から誘致をはじめたISTH2011、元気な日本を発信するためにも何とか予定通り京都開催を!と願い、楽天の嶋選手の言葉を借りるなら、「見せましょう、コンベンションの底力を!京都の底力を!京都国際会館の底力を!」という心境でまさに背水の陣でした。結果は、理事会でのディスカッションとコミッティの投票により、満場一致で予定通り京都開催決定となりました。その後、学会理事長から「日本の大震災支援の気持ちを表し、行動するためにも京都での学会に参加しよう」という力強いメッセージが発せられました。

今回の成功は、官学民協力の下、迅速な対応、客観的な情報開示、攻めの積極的な展開が功を奏したものでした。さらに、学会を通して培ってこられた参加者同士の絆や信頼が人々の心を動かし、会議を成功に導いたとも言えるでしょう。ISTH2011京都開催は、最先端の研究発表や討論は勿論のこと、日本を支援し、人々を勇気づけ、「日本の今」を海外に伝える貴重な機会ともなりました。

「ようこそ京都へいらっしゃいました」

このおもてなしの気持ちを参加者の皆様にお伝えしたいと思い、当館では会期中無料呈茶席をご用意し、連日大盛況でした。

国際会議は、国や地域を越えて志を同じくする人々が集い、意見を交わし、知識や経験を分かちあう素晴らしい機会です。参加者一人ひとりが集うことの素晴らしさを感じていただけるのであれば、さまざまな国際会議の舞台裏を支える一人としてこれに勝る喜びはありません。感動は原動力となります。多くの皆様のご尽力により今学会が京都で開催されましたことを深く感謝申し上げますとともに、今学会の成功が今後の国際会議誘致に繋がることを心より祈ります。

(公益財団法人国立京都国際会館 営業部長 苗村 淑子さん)