
「狗奴」のCG

遠吠えを残して去りゆく「狗奴」

漢字を使った演出が特徴的な「狗奴」の床面映像

「六将」のイメージ・スケッチ
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「めざめの方舟」は、会期前から各種メディアでの取り上げが相次ぎ、その露出が群を抜いていたこともあり、開幕日から最終日まで、定員一杯での運営が続いた。年齢制限を設けなかったため、子供を中心としたファミリーをはじめ、アニメーション・デジタル映像・映画などに関心ある若いカップル、年配の夫婦まで、あらゆる層からの来場が続いた。
はじめて触れる「体感型映像空間」に、「不思議で涙が出た」「地球回復への思いを新たにした」など積極的に評価する声のほか、「難しかった」「あっという間で理解できなかった」と、内容に対する戸惑いの声もあった。しかし、会期半ばには、「5回目の来場です」「何度見ても楽しめる」とのリピーターの声が多くなり、常に行列の途絶えることのない関心の高さを示した。
万博会場内で働くスタッフの間からは、特にフランス館、イタリア館から、「最も芸術性が高く、必見のパビリオンだ」との口コミが広がり、ポーランド、スイス、オーストラリア、中国、韓国、カタールなどのパビリオンから、政府代表やスタッフの来館が相次いだ。何の予備知識もなく来館した海外パビリオンの関係者が見終わると「もしかして押井監督の作品か?」と、内容を見ただけで押井作品であることを指摘する海外パビリオンの関係者も現れ、押井監督の世界的な知名度に驚かされることも多々あった。「めざめの方舟」の展示により、愛知万博が掲げた「地球大交流」をも果たすことができた。

「映像もですが、『めざめの方舟』で一番なのは、私の場合、音でした。とっても臨場感あふれてて圧倒された」(名古屋市・37歳・女性)、 「音響に新たな刺激を受け、人間としての感性がかわるような気がしました」(名古屋市・44歳・女性)、 「最新のテクノロジーを駆使したシアターでありながら、中に流れるものは自然と人間という非科学的なもの。何か不思議な感じがしました」(名古屋市・40歳・女性)、 「マクロな鳥の視点や直視的な魚の目線が楽しめ、まさに夢みる山と関心」(名古屋市・51歳・男性)、 「地球は人間だけの世界じゃないんだって感動します」(名古屋市・20歳・女性)、 「『汎』の不思議な雰囲気に興味を持ちました。見る角度により表情が違って見えます」(愛知県・37歳・女性)、「映像と『汎』などの像が神秘的で興味深かったです」(東京都・34歳・女性)など、「めざめの方舟」に寄せられた声を総合すると、特に女性を中心に高い評価を集めたと言える。
3部作の第1章「??鰉」では、水が天空をめぐり、海に戻り、多くの生物と出会うクライマックスのシーンで、「自然と涙が出た」との声が聞かれた。第2章「百禽」については「切ない物語ですね」との声。第3章「狗奴」では「何とも言えない鳥肌が立つような、言葉にできない気持ちになった」など、およそ大迫力の映像と音響からは想像できない感受性の鋭い感想が、女性を中心に多く聞かれた。それら評価の源泉について聞いてみると「音楽が良かった」との声が最も多く、この点は、海外からの来場者にも共通してみられた。歌詞が大和言葉で作られていたことから、日本人でも聞こえるようで聞こえない、といった演出が、結果的に世界共通の言葉としての音楽に対する高い評価に結びついたものと考えられる。

床面映像とシンクロしながら踊る子どもたちの姿も多く見られた。床面上での安全観賞という点からは、スタッフは冷や冷やしながら見守らなければならなかったが、擬似的に作られた環境(映像)と自然ととけ込んでゆく子どもたちの姿は、押井監督の「特に子供が楽しめるパビリオンですよ」との売り言葉通りのものであった。


中国・香港を中心に発行されている雑誌「Next Magazine」が開幕前の内覧会などでの取材から、愛知万博を特集した紙面で、「めざめの方舟」を「必見No.1パビリオン」として紹介。こうした海外メディアのいち早い評価は、ほかにも米国三大ネットの「NBC放送」のWeb版、「英国BBC放送」のWeb版などでの取り上げをはじめ、世界各国のさまざまなメディアで見られ、地球規模での扱いであった。特にフランスは、カンヌ国際映画祭にノミネートされた押井監督の知名度から、国営放送の「TV5」をはじめ、会期中はテレビ局、雑誌社などの取材が相次いだ。

国内に目を向けると、パビリオンの芸術性に着目した特集が特に目立った。建築や国内の美術情報を発信する雑誌『BRUTUS CASA』2005年5月号では、「建築&空間演出で採点しました。パビリオン・ベスト4はこれ!」で、スペイン館、三井・東芝館、トヨタ館と共に「めざめの方舟」を取り上げた。紙面では、見開き2ページを使い「“体感“は意識に働きかけるもの。その中心となるのが、建築好きもハイテク好きも納得させる視覚効果の数々だ。特に押井監督は、アニメ作品でも世界観の構築のために背景デザインにこだわることで有名。実空間での表現となる今回も、神秘的で視覚に訴えかける空間演出が効いている」と評価し、三井・東芝館、トヨタ館がパビリオンの建築部分に留まったのに対し、唯一、建築内部の展示空間が評価された。
他にも国内文化の最新動向を発信する雑誌『Invitation』2005年5月号では、特集記事「愛・地球博カルチャーガイド」で、「誰もが理解できるものは無個性に陥る危険性をはらむ」との小見出しを付け、愛知万博について、「非常に保守的で、萎縮した万博になっていることを残念に思っています。環境というテーマをまじめに説明しようとするあまり、環境が抱える問題や矛盾した現状を露呈してしまった。」と、万博全体を総括しながらも、「そんななかでで、中日新聞などのパビリオンで、アニメーター・押井守氏が総合演出した『めざめの方舟』は評価したい。押井守というひとりの作家をこれほど前面に押し出した大胆さが凄いと思う」と、絶賛だった。
展示の技術面に着目した取り上げも目立った。特に「フジサンケイビジネスアイ(2005年7月30日)」では、世界初のタマゴ形スクリーンについて、「万博初の未来スクリーンが街中でも見ることができそうだ」と、一面を飾ったのをはじめ、プラズマ・ディスプレー・パネル96台をネットワークでつなぎ、実現した世界初の床面映像システムなどについても取り上げられた。
愛知万博における他に類を見ない展示が、単なる万博のパビリオンとしての評価を超え、国内外のアート、テクノロジーの分野において大きなインパクトを与えたことが、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどでの掲載内容から確認できる。「先端技術とアートが融合して見事なエンターテインメントに“昇華”している」と、わざわざ来館したディズニーワールドのリッチ・テイラー副社長のコメントが、「めざめの方舟」についての評価をうまくまとめていると言えるのではなかろうか。
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