Beyond the Boundaries – “境界を越えて、つながるデザイン”
ソニーグループは「CEATEC 2025」で社内外のイノベーション創出支援を行うSony Acceleration Platformの活動を出展し、同展の「エコ&デザインチャレンジ」優秀賞を受賞した。ブースのデザインコンセプトや出展内容について、同社クリエイティブセンターの宮下雄介氏とSony Acceleration Platformの沼田洋平氏に話を聞いた。
「越境」をデザインで表現した 洗練され温かみのあるブースに
――CEATEC 2025のブースコンセプトについてお聞かせください
宮下 ソニーグループ(以下、ソニーG)は“Beyond the Boundaries”をコンセプトに掲げ出展し、社内外のイノベーション創出支援を行うSony Acceleration Platformの活動を紹介しました。“Beyond the Boundaries ”は直訳すると「越境」という意味です。
現在、ソニーGでは長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」の実現に向けて取り組んでいます。端的に言うと10年後にソニーがありたい姿を描いた長期ビジョンで、その実現に向けて、組織の壁を超えてつなげるバウンダリースパナー(異なる組織の間のコミュニケーションや協力を促進する存在)が重要になってきます。 Sony Acceleration Platformはグループソニー内でその概念を現場の共創活動へとつなげています。
――越境とは、具体的に何を指しますか
宮下 ひとえに越境と言っても、色々な概念があります。単純に領域を越えるという意味で使われることもあれば、事業間や組織の壁を取り払ったり、そこに所属する人々や事業そのものをつなぐこともあるでしょう。それらを包括したのが“Beyond the Boundaries”というコンセプトで、CEATEC 2025ではそれをもとにデザインしました。
――デザインする上でこだわった点について教えてください
宮下 空間ディレクションとして3つ軸があり、1つ目が「Sophisticated Hygge」と呼ばれている概念です。ただ洗練されているだけではなく、人の温かみや、つながりを表現することを目指しました。
2つ目が先ほども話に出てきた「Boundary Gradation」です。今回の展示ではビジュアルをゼロから開発するのではなく、 Sony Acceleration Platformのロゴにあしらわれている空と海それぞれを表すブルーとグリーンのグラデーションを、いかにデザインコンセプトに落とし込むかということに注力しました。
3つ目が、 Sony Acceleration Platformの活動の中核であるイノベーションを表す「Engaging Lights」です。イノベーションの源泉とは人の思いや閃き、情熱だったりするので、それをどうしたらブースに配置された照明を通じて表現できるかを考えました。
――ブースは青と緑の鮮やかなグラデーションが実に印象的でした
宮下 青と緑の配色は Sony Acceleration Platformのロゴが由来となっています。ファブリックに青から緑へのグラデーションを走らせることで、空と海の境を越え、その先に広がる可能性を表現しました。
構造物を減らし開かれた空間に 自社独自の環境配慮素材もフル活用
――ブースにはどのような形でエコを取り入れましたか
宮下 実際に現地でブースをご覧いただいた方はお気づきになったと思いますが、他の展示ブースと比べても、大きな構造物が取り払われたオープンな設計になっていました。環境負荷の低減とデザインを両立するためにファブリックを使い、誰もが入りやすい開かれた空間を構築しました。
展示パネルには、環境負荷が少ない紙素材「オリジナルブレンドマテリアル」を使用したほか、スタッフユニフォームに「Triporous™(トリポーラス™)」という天然由来の多孔質カーボン素材が使われている点も大きな特徴です。いずれもソニーが開発した環境配慮素材です。
――普段の業務からエコやサステナビリティといった考え方を重視しているのでしょうか
宮下 ソニーGでは、障がい者や高齢者を含むすべての人にとって利用しやすいものにするため、イベントにおけるアクセシビリティガイドラインを設けて取り組んでいます。そのため、CEATECに限らず、どのイベントにおいてもサステナビリティやインクルーシブという概念が組み込まれた設計となっています。
――エコとデザインの両立が難しいと感じたことはありますか
宮下 特にありません。デザインをする上で大事なのはエコだからどうとかではなく、お客様に何を体験していただき、何を感じていただくのかという、もっと本質的なことだと思っています。エコと体験価値の向上は相反するものではないはずです。
もちろん、環境負荷の高い素材の方が安かったり、廃棄が楽だったりするかもしれません。ですが持続可能性という観点から物事を考えたとき、今できていることが将来的にできなくなってしまうのは大きなマイナスです。それは次世代に対する責任の放棄にもつながりますので、我々がエコやサステナビリティの取り組みを進めていくことは、当然のことだと言えます。
明るい雰囲気で会話も弾んだ グループの新たな側面を訴求
――ブースを訪れた来場者の反応や評価はいかがでしたか
沼田 遠目から立ち止まって、ブースの全景を眺めている方が多かったのが印象的でした。ものすごく派手な装飾というわけではありませんでしたが、見た人を惹きつける魅力あるブースに仕上がっていたと思います。中でお客様と話をしていても、終始穏やかな雰囲気で、ブース全体が明るい感じでした。
―-来場者の方とはどのようなお話をされましたか
沼田 Sony Acceleration Platformで提供しているイノベーション支援サービスをはじめとした我々の活動内容をお伝えしました。中には毎年CEATECで当社ブースを訪れている方もいらっしゃいましたが、従来のハードウェア中心の展示とは違う、Sony Acceleration Platformのイノベーション事例の展示はかなり新鮮に映ったのではないでしょうか。ブースを訪れた多くのお客様に、これまでとは異なるソニーGの側面を伝えることができました。
――言われて嬉しかった言葉はありますか
沼田 CEATEC 2025の開催テーマである“Innovation for All”は、社内外のイノベーション創出を支援する Sony Acceleration Platformの活動内容に通じるものがあり、シナジーを感じました。お客様から、「ソニーGの事業開発ノウハウやグローバルネットワークを使い、社外と共創しながらイノベーション創出に取り組んでいることがよく分かった」と言っていただけたのは嬉しかったですね。
2026年で誕生から12年になるSony Acceleration Platformは、これまでにさまざまなアップデートを重ねてきました。その最新の姿をCEATEC 2025で見ていただき、スタッフの説明を通じて感じていただくことで、お客様の理解をより深められた実感があります。
「原型を創る」理念のもと 新しい価値観を創出していく
――CEATEC 2025で「エコ&デザインチャレンジ」優秀賞を受賞したお気持ちを聞かせてください
宮下 大変光栄なことだと感じています。今年から始まったこの取り組みは、持続可能かつ魅力的な展示会の在り方を追求し、ワクワクする空間づくりの促進によって、新たな価値と市場の発展に寄与し産業の活性化を図るものとうかがっています。
これは、「感動に満ちた世界を創り、次世代へつなぐ」というSony’s Sustainability Visionにも通じるところがあります。
ビジョンは単に存在するだけではなく、普段の業務、例えばクリエイティブセンターであればデザインをはじめとしたアウトプットに根付いていることが重要です。そういった意味で、常日頃から心掛けていることが、「エコ&デザインチャレンジ」優秀賞という形で評価されたことは、非常に意義深いことです。
沼田 私も、とても嬉しく感じています。 Sony Acceleration Platformのパーパスは、「あらゆる人の発想を実現させ、豊かで持続可能な社会を創り出す」というものです。“持続可能”という大事なキーワードが重なる「エコ&デザインチャレンジ」で、我々の理念を体現したブースが評価されたことは、大変意義深いことだと思います。
――今後、どういったデザインに挑戦してみたいですか
宮下 クリエイティブセンターが掲げている「原型を創る」という理念の元、空間デザインにおけるアプローチとしては、3つの指針があります。それが、①独自性があって印象に残る体験を生み出すこと、②来場者の行動や動線、体験の完成度を高めること、③背景や文脈を丁寧に読み解き、空間全体としてのストーリーを構築することです。
来場者が単に見て満足するのではなく、新しい価値観を創出できるような空間づくりが求められており、CEATEC 2025でも実現すべく全力を尽くしました。「原型を創る」のは言葉以上に難しいことですが、非常にやりがいのある挑戦だと思いますので、今後も多面的な視点を養いつつ達成できるよう努めていきます。
ソニーグループ
クリエイティブセンター コーポレートデザイン部門
スタジオ4 チーム1 プロデューサー
宮下 雄介 氏
Business Acceleration and Collaboration部門
Open Innovation and Collaboration部
Community and Communications Team 統括課長
沼田 洋平 氏
※本記事は「EventBiz Vol.42」に掲載した内容を編集したものです。







と沼田氏(右).jpg)










