いよいよ現地に入り、施工が始まる。4日間も施工期間が取れるのは、緊張している私たちにとって、せめてもの救いである。日本の展示会も見習って欲しいものだ。先述したとおり、トラブルへの保険をかけた図面であったので、施工そのものは、国内なら1日で完了する物量だった。機器の故障や調整にも1日程度を予定していた。ただし、肝心の施工スタッフは会場や主催者側でつくるユニオンに加入している会社しか使えない。アメリカの展示会業界の特色的な慣習であるが、お互いに現地ではじめて会い、しかも言葉も通じない者同士でブースをつくらなければならないことの不自由さを少しも理解していない制度だ。
当初は、見慣れない東洋人の集団を遠巻きに見ていたほかの出展者も、KAPAS?Uとイメージメッシュに灯が入ると近づいて来るようになった。我々の作業指示や要求に冷たかった現地スタッフたちも同じで、私ならこう使うとか、一緒に売り込みに行こうなどと話し込んだりするようになった。そして、このコミュニケーションが、我々に思いもよらぬ幸運を運んでくれた。
今回の出展で痛かったのは、輸送コストが予想以上にかかったことだ。設計をできるだけシンプルにした理由はここにもある。限られた予算のしわ寄せは当然、ブースデザインに影響し、私たちはできるだけ物量を減らし、どうしてもつくりたかったトラスの天吊り構造というブースデザインを諦めなければならなかった。
ところが、設営も終盤に近づいた頃、トラスを吊り上げたところで作業が一旦落ち着いた。これを見て、このまま吊り上げたままの方が良いという感想を現地スタッフまでもがもちはじめたのである。リガー屋(吊り上げ工事スタッフ)と交渉をした結果、トラスは吊り上げたままにしてくれることになった。リガー屋もこの方が良いと賛同してくれた。製品にスイッチを入れるタイミングがこれと前後していたら、私たちは悔しさをかみ殺して、設計図通りに作業が進むのを見守るしかなかっただろう。本当に嬉しい出来事だった。同時に、開幕を待たずして私たちの製品が認められたようで、本番への大きな自身にもなった。後日談だが、撤去時、倉庫に預けた収納ケースが届けられるのを待っている時、通りかかったフォークリフトのオペレーターが「いい展示だった。だから君らのケースは優先して出してあげるよ」とわざわざ倉庫の中から探し出して運んできてくれたりもした。
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