【レポート】台湾MICE 最前線!2022 

10月中旬より入境制限がなくなった台湾は、MICE のさらなる回復・誘致のために動き出す。MICE 資源の開発が進む南エリアを中心に最新動向をレポートする。

高雄市

Robert Campbell氏

1900年代に造船業を中心に鉄鋼・重工産業の街として発展してきたが、近年はAIoT や5G 産業を中心とした街へシフトした高雄市。Kaohsiung Exhibition Center (KEC、高雄エキシビションセンター) を管理・運営するinterplan のRobert Campbell 副社長は「非常に美しい都市。1980年代までは倉庫しかなかったが、ここ十数年で街のレベルが変わってきている」と話す。

MICE ベニューも街と同様にAIoT や5G を体感できる施設が増えており、海沿いの徒歩圏内にミュージックセンター、e-sports アリーナ、ポートターミナル、KEC、ソフトウエアテクノロジーパークがある。コロナ禍では台湾内MICE の誘致を中心に補助金を出すことでイベントの持続に尽力した。2022年10月には市内各地で「台湾デザインEXPO」が約1か月間、盛大に行われた。市内のホテルは約400軒。2021年には「Kaohsiung Kaohsiung Marriott Hotel」、2022年には「TAI Urban Resort」がオープンするなど5つ星ホテルも増えている。2023年には「ホテル・ニッコー高雄」が開業予定。

TAI Urban Resortの一室。畳の小上がりから高雄市が一望できる
Kaohsiung Kaohsiung Marriott Hotelの宴会場

 

VENUE Kaohsiung Exhibition Center(KEC)

「海と街をつなぐ」をコンセプトに作られたKEC は2014年にオープンした。建設前段階から施設を代表するイベントになるとされていた「Taiwan InternationalBoat Show」を意識した設計になっており、9,100㎡の南ホールは天井高27mと大型ボートを展示できる構造になっている。北ホールは8,800㎡で天井高12m。そのほか大小15の会議室、屋外に海を望むウォーターフロント広場を備える。
2020年には「ICCA2020」が開催された。新型コロナウイルスの影響によりハイブリッド形式で行うことになり、渡航できない海外の受賞参加者のためにステージ上にはオンライン参加者をホログラムで投映することで対応。2021年には高雄市が推進する「文化技術:革新的な5G バーティカルアプリケーションプロジェクト」の対象に選ばれ、一層ハイブリッドへの対応力も強化した。1対N で多国籍が参加するウェビナー向けにAI が講演者の言葉を自動で公聴者の言語に通訳する「AI スピーチ通訳システム」がすでに導入されている。GBAC STAR 認証を受けている。

Kaohsiung Exhibition Center正面。ガラスの奥はサウスホールで搬入口として開閉可能。

屏東県

屏東県ではかつて噛みタバコのような嗜好品として「ビンロウジ(betel nut)」と呼ばれるヤシ化の植物の栽培が盛んに行われていた。しかし発がん性などが認められたこと、根が浅いために土砂崩壊の原因のひとつになっていたこと、販売する女性の服装が過激だったことなどから様々な規制が生まれたため、2010年代にはビンロウジに代わるものとして、カカオ栽培への転換を開始した。カカオ栽培やチョコレート産業への認知度を高めたことで若者のU ターン就農も増えている。

SUSTAINABLE TOUR  オーガニックカカオファーム

屏東県はカカオ栽培の北限。日本ではできないカカオ摘みを体験できる

KEC から車で約1時間の場所にある「Bella QueenCacao」は、自然農法でカカオを栽培している。農園見学ではカカオの種類などの説明を受けたのちに採取の体験、生カカオの試食が可能。車で数分の場所に位置する「生態心霊休閒農場(Ecological Heart Leisure Farm)」では、様々な台湾産チョコレートとカカオ茶をテイスティング。カカオはチョコレートだけでなく、カカオバターの有効成分を利用して美容化粧品などへ転換し無駄のない利用を行っており、ここではカカオ成分由来のリップスティックづくりも体験できる。10月は18 ヵ国からのツアーが農園に来たという。

カカオ含有率や食材などが異なるチョコレートを比較できる

台南市

ハイテク産業クラスターの構築を図るために作られた「南部サイエンスパーク」へ、新エネルギーや半導体、電子回路関連の企業が次々に集積している台南市は、台湾最古の都市と言われている。台湾を縦断する高速列車「HighSpeedRail(HSR)」の台南駅付近はアウトレットモールをはじめとする三井グループによる土地開発が進んでいる。2024年は市設立400周年を迎えるので、ランタンフェスティバルを開催して盛大に祝う予定。

コロナ禍前はホテル不足が課題だったが、現在は新規オープンが続き、約200軒(約5000室)まで増えた。また次世代のMICE人材育成にも注力しており、地元の大学の観光学科や高校の部活動でイベントに参加してもらい翻訳・通訳者の育成を図っている。そのほか台南市にはDIYなどの体験が可能な工場見学スポットが24か所ある。

VENUE ICC Tainan

会議室「Principal」。絨毯は自然をモチーフにしたカラーになっている

HSR 台南駅徒歩5分の位置に、新たな会場「ICCTainan」が2022年にオープンした。外観は台南の歴史的な建物に使われているレンガをイメージした色彩で、施設は10,692㎡の展示棟と会議棟、屋外スペースで構成されている。会議棟には1,080㎡と810㎡のカーペット敷きのホール、中小会議室を備え、屋外には約1,500㎡の北広場、約7,000㎡の東広場を持つ。9月にはヘルス系の展示会が開催され4日間で10万人が来場するなど、すでに稼働が進んでいる。また屋根には太陽光発電システムが導入されており、電力の30%を供給している。

高さ14mのホールにはレンガやタイルをイメージしたパブリックアートを設置

TEAM BUILDING お香づくり体験

お香はヒノキと楠の粉を水と混ぜて粘土のように成型していく

古都・台南は「コンビニよりも寺院が多い」と言われている。台湾は仏教や道教を信仰する人が多く、「お香」の煙を通じて神々の声を聴くことができると考えられているため、参拝者の必需品の一つであるお香は台湾人の宗教観に密接に関係しており、その歴史も長い。MICEでは手作りでお香を製作・販売している創業100年の老舗「呉萬春香舗(Wu Wan Chun Incense Store)」のお香職人からレクチャーを受けながらお香づくりを体験することが可能で、制作だけでなく、お題を設けて完成度を競うことでチームビルディングとして楽しむこともできる。