商業施設やオフィス、ホテル、イベントなどの空間づくりを行う丹青社は2024年11月27日から29日まで、空間演出技術の研究開発・実証拠点「港南ラボ マークスリー[Mk_3]」で、若手社員が中心となった“自主実践プロジェクト”の研究活動成果を発表するイベント『超文化祭2024』を開催した。その体験レポートをお届けする。
おもてなし×AR『Welcome to Mk_3-うぇからぼ-』
会場に着き、最初に体験したのがおもてなし×AR『Welcome to Mk_3-うぇからぼ-』だ。ARアプリを起動して会場の入口にカメラを向けると、CMIセンターのオリジナルキャラクターであるイグアナの「いぐっち」が花火と共に盛大に出迎えてくれた。それに導かれるようにしてエレベーターで2階へと移動すると、メイン会場のエントランスでは先ほどのいぐっち(いつの間に先回り?)に加え、同じくCMIセンターオリジナルキャラクターで猫の「カミール」、蛾の「もるるん」がカラフルな装飾と共に歓迎してくれた。ちなみにこの3匹のキャラクターの頭文字はつなげると「CMI」になるという、なかなかニクいネーミングだ。個人的に好きな造形のキャラクターだったのでグッズはないのかと聞いたところ、現時点では販売されていないとのこと。残念。
指文字×AR『見つけて!YU-MO』
メイン会場でまず体験したのは、指文字×AR『見つけて!YU-MO』だ。ARを使った聴覚障がい者の日常を疑似体験できるコンテンツとなっており、企画・キャラクターデザインからiPadアプリとARシステム構築まですべて丹青社の社員が手掛けた。はじめにヘッドホンを装着すると、ノイズが流れ、外界の音はすべてシャットダウンされる。その状態のまま指文字が描かれた台座の前に移動しiPadを向けると、ARを使った動画が映し出される。台座に描かれた指文字をヒントに、その動画が表しているものが何かを回答し、次の台座へと向かう。最終的にすべての回答をつなげ、正解のキーワードを答えられると景品がもらえるといった内容だ。ちなみに筆者(謎解きにはちょっと自信あり)は途中の回答をミスったため意味不明なワードができてしまい焦りに焦ったが、ラスト1分くらいで突如ひらめき、ギリギリ正解することができた。なかなかの難易度だったと思う。
記念写真撮影『一緒に決めポーズ』
続いて、記念写真撮影『一緒に決めポーズ』を体験した。超文化祭2024限定のデザイン枠3種から好きなデザイン1つを選んで記念撮影し、印刷されたQRコードを読み込むと撮影した画像をDLできるというもの。パナソニック システムデザイン協力のもと、丹青社がフレームデザインを行った。通常の記念写真と違いQRコードを使用しているため、好きなタイミングでDLできるのが現代的だと感じた。また、DL用のQRコードの下には宣伝用のQRコードも表示されており、広告枠として使うことも想定された設計になっているという。
没入映像×センサー『未来の遠隔検査システム テレプレくん』
次に体験したのが、没入映像×センサー『未来の遠隔検査システム テレプレくん』。複数のプロジェクターを組み合わせ、壁と床の2面に映像を投影することで没入感のあるコンテンツに仕上げた。未来の検査ドローンであるテレプレくんを遠隔操作し、引渡し前のカフェの検査と遠隔塗装補修を行うという丹青社らしいストーリーも面白い。投影システムにはUnityを使っており、ハイクオリティの映像は迫力満点。ドローンで品川の街を滑空していくシーンではちょっとしたジェットコースター気分も味わえた。遠隔塗装補修のシーンはゲーム仕立てとなっており、コントローラーを使って自分のペンキを他の人よりたくさん塗った方が勝ちという某イカゲーのような内容で、ゲーム好きの筆者が大人げなく全力を出し1位をもぎ取ったのは言うまでもない。
生成AI『Create Hobby World-もうひとりの私達-』
続いて体験した生成AI『Create Hobby World-もうひとりの私達-』は、タブレットで質問に回答することで、AIが「もうひとりの自分」を表現した動くアバターを生成してくれるというもの。制作には映像会社のレイが協力した。筆者は「あなたを表現する色」をコバルトブルー、「あなたが憧れるもの」を忍者、「あなたが好きなもの」を犬と回答したところ、アメコミに出てきそうな青い忍び装束に赤い犬の面を付けためちゃくちゃカッコいいアバターが誕生したので、「いぬにん」と命名した。これがもうひとりの自分だとしたら最高にクール!ちなみにこのアバターは大型Lモニターに映し出された「ワールド」に転送することで、自分の前に生成された他のアバターと一緒になって動き出す仕組みで、その動き方にも個性があり思わず「おおっ!」と声をあげてしまうユニークさだった。(AIにおける著作権の問題があるためアバターをきちんと記事で紹介できないのが残念だ……)
参加型メディアアート『だれでも☆アイドル』
最後は参加型メディアアート『だれでも☆アイドル』を体験した。アイドル衣装や小物が用意されており、それを身に着けグリーンバックの前に立つ。スタッフから「はい、ここで決めポーズ!」といった指示が出されるので、それに応じてポーズを取っていく。すべての撮影が終わると、ものの1~2分で自分がアイドルになったようなショートムービーが生成される。そして、次の体験者がアイドルになると、自分はそのファンとなってムービーに登場する。それが延々と連なり、1つのコンテンツとなっていく仕組みとなっていた。プランニングと配信システム構築を丹青社が行い、システム開発はメディアアート作品を得意とするGRINDER-MANが協力した。
すべてのコンテンツを終え……
すべてのコンテンツを体験し、プリントアウトされたステッカーやノベルティなど、たくさんのお土産を抱えて会場を後にした。体験したコンテンツはどれも若手社員が中心となって制作したとあって、感性を刺激されるものばかりだった。また、商業ベースではなく実験的なコンテンツだからこそ実現できるような内容のものもあり、自由な発想と最新技術が組み合わさることで、これからの時代を彩るような革新的なコンテンツが生み出されるのだと改めて感じた。……などと言っていると本当に締めのようだが、実はまだあり、帰り道の丹青社本社に至る道でいぐっちたちがお見送りをしてくれたのだ。AR越しに品川の空には「ありがとう」というメッセージが記されており、最後まで何とも心温まるイベントなのであった。