イベントと映像業界の変化を振り返って ~新しい業界を新しい世代と創っていく/日本映像機材レンタル協会(JVRA)×ピーオーピー 合同企画

◆続く世代に「どう」伝えるべきか
─若手の教育について考えていることや悩みはありますか?

高野 年齢が比較的新入社員と近く、お互い話が通じやすいこともあり、教育係を担当しています。もちろんまだまだ自分にも未熟な部分があり、技術的なことを完璧に教えることはできませんが、教えることによって自分のスキルアップにもつながっています。自分が入りたてのころ、先輩に教えてもらって実際の仕事の現場で助けられた経験を思い出しながら、またそれを後輩に伝えるように意識しています。

栗田 当社では新入社員だけでなく、中堅層以上の社員を対象とした教育の取組みもあります。外部から講師を招き、金融リテラシーやインサイダー取引に関する注意などをテーマとした社内セミナーを、2週間に1回くらいの頻度で実施しています。また、日々変化の激しい業界に社員が対応できるよう、部長が講師になってトピックスを共有する勉強会も行っています。

但木 完全オンライン、リアル、ハイブリッドとイベントの形によって使うべき機材はそれぞれ違いますが、同様にオペレーションのノウハウもすべて違います。例えば、オンラインのイベントでは配信画面の見やすさの側面からカットインまたはカットアウトするシンプルなスイッチングが多く採用されていました。しかし、リアルイベントではよく「照明さんのゆっくりとした暗転のテンポ感と合わせて、映像もゆっくりとフェードアウトする」といったような、他のセクションと息を合わせたオペレーションが必要とされます。ですがコロナ禍に入社し、配信イベントのオペレーションで慣れてしまった世代は、“ 他のセクションと息を合わせたオペレーション” というものを感覚としてまだ理解できていません。私たちは元々リアルイベントでその感覚を教え込まれて現場を重ねてきたために、当然演出とは他のセクションとタイミングを揃えるものだ、と思い込んでいる。その一方で、なかには配信ライブは見ても現地に行ったことがなく、会場でオープニングの映像が流れる瞬間、その空間がどんな空気なのかを知らない子もいるんです。そんな世代の子たちに、急にイベントの現場で「良いオペレーション」を求めても酷な話で、教え方にも工夫が必要だと思います。

古川 リアルイベントで他セクションとのコミュニケーションって、より重要になってきていますよね。配信のイベントのときはあまり大規模な機材を使用しないため、照明や音響などすべて自社で行っていました。そのせいか、ほかの企業の照明さんや音響さんと話す機会が圧倒的に少なく、周りとのコミュニケーションが不足していて、他社と会話することに対して苦手意識を持つ子もいます。そもそもほかのセクションと何の打ち合わせをしたらいいか、いつどのタイミングで話したらいいかも、リアルイベントにおける仕事の場数を踏めてない分、分からなくても無理もないのかもなと。

但木 できるだけリアルイベントの仕事を見て勉強してもらう、あるいは経験してもらうことがスキルアップへの一番の近道だとは思いますが、なかなか十分な機会を作ってあげられないのが現状です。そのため、いかに彼らに効率よくスキルアップをしてもらうかをベテランの先輩たちと一緒に考えていて、若い社員に対して「どの機材をどこまで操作できるか」などの習得状況や、次に何を覚えるかの目安を言語化したチェックシートを実験的に取り入れています。若手同士で共有すればお互いのスキルが見えて刺激になりますし、営業部と共有すれば任せられる仕事が一目でわかります。今はまだ課内のみの取り組みですが、会社全体で使えるツールにしていきたいですね。