【インタビュー】BtoB ビジネスにメタバース空間の コミュニケーションを活かす【ジクウ】

ジクウはBtoBに特化したメタバースイベントプラットフォーム「ZIKU」を提供し、新しいイベントのコミュニケーションを創り出している。メタバースの現状とイベントでの活用事例について、堀譲治代表取締役社長に聞いた。

(本記事は2023年5月31日発行 雑誌「EventBiz」特集】イベントのDX化とハイブリッド/オンラインイベントより抜粋した記事です)

「ZIKU」が生むコミュニケーション

 
─ZIKU」とはどのようなサービスなのでしょうか

「ZIKU」は3D空間のメタバースイベントプラットフォームで、ユーザーはアバターで会場内を自由に歩き回ることができ、音声、チャットで出展者とのコミュニケーションが可能です。

やや古いパソコンでもブラウザと十字キーで空間内を自由に動き回れるため、ご高齢の方やお子さんでも簡単に操作ができます。

他社のメタバースのサービスと比べてBtoBのイベントに特化しており、特定の来場者が訪問したブースや閲覧した資料、会話をした担当者など全ての履歴データを細かく取得できます。

また、MAツールや営業支援システムと連携させることで、イベント後のフォローアップも並行することで、リアルイベントと同じような商談の機会を創出します。

また、非常に簡単にメタバースが始められる点もメリットです。

メタバースは通常、3DCGの空間を1から作るためにスケジュールとコストがかさんでしまい、非常に導入のハードルが高いですが、「ZIKU」は予めテンプレートが用意されているため、クライアントとのヒアリング後、すぐにイメージに沿った空間を提案できます。

このスピード感が、イベントをすぐ企画したい、イメージを掴みたい、まずは価格を抑えてメタバースを試したいといったニーズに応えます。

最近のアップデートとしては、来場者間でも会話をしたい、より深いコミュニケーションを図りたいというニーズが多かったため、出展者と来場者だけでなく、来場ユーザーのアバター同士でコミュニケーションが取れる機能を実装しました。

音声とテキストによるチャットがすぐに開始できます。具体的な用途は、学会のパネルポスターセッションや大企業の社内展示会などで、お互い遠く離れた事業部にいる社員同士でもメタバース上であれば気軽に会話ができるようになりました。

─「ZIKU」を使った最新事例についてお話しください

みずほ銀行の事例では、ベンチャー企業とみずほ銀行の取引先企業同士をマッチングさせる展示会型のイベントを実施しました。

従来はZoomを利用したイベントで、セミナーなど一方通行の発信はできても、イベントで偶然の出会いを作ることや双方向のコミュニケーションは実現できていませんでした。

しかし「ZIKU」のメタバース空間でイベントを開催することによって、ユーザーが自らメタバース空間内を歩いてベンチャー企業のブースに入り、ブースの担当者と交流するといったリアルイベントに近い体験が可能になりました。


 

次の利用ステージの到来

 
─現在のオンライン・ハイブリッドイベントの現状をどのように分析していますか

われわれのサービスを活用する利用者のステージが変わってきていると感じています。

リアル開催できる状況であっても、オンラインやメタバースでの開催を続けるイベントは、よりオンラインでなくてはならない必然性が高く、メリットがあるからです。

例えば人材採用のイベントでは、現在もオンライン開催が多い。急激に増加するインバウンドの需要に対して、旅行業や外食業界は人手が足りておらず、より多くの働き手を求めています。

オンラインならば遠方や海外の参加者も気軽にイベントに参加できるため、メタバースを含むオンラインイベントが活用されています。

DXを推進する事業部からもニーズが多いです。会社全体の活動についてDXが求められ、その一環で社外や社内に向けたイベントを開催するパターンです。

ただ単にイベントをデジタル化するのではなく、データや参加者のログが取れるため、リアルイベントより効果測定がしやすく、成果を最大限に生かしたマーケティングが可能です。

─現在のメタバースについて、効果的な利用方法はありますか

まず、メタバースを活用すれば類似イベントの差別化が図れます。

参加する側へ目新しさと、セミナーの配信ではなくリアルイベントとも異なった、新しい参加体験を提供できます。

また、リアル開催だけならば1年に2回しかできなかった開催頻度も、オンラインを活用すればコストや人手を節約しつつ、回数を増やすことができます。

開催回数を増やすことは、人との出会いやコミュニケーションのチャンスが増えますし、メタバースならリアルイベントでの搬出入の大変さも、台風や大雪といった悪天候のリスクもありません。

従来のオンラインイベントとの活用方法の違いがあるとすれば、イベント前後のアクションです。

セミナーなどを配信する流れは2Dのオンラインイベントと変わりはありませんが、セミナー後に聴講者からセミナーの感想について尋ねたり、質問を受け付けたりすることが重要で、この双方向のコミュニケーションによって、格段にアポイントにつながる確率が高くなります。このプロセスはリアル開催と似ており、いかにコミュニケーション戦略を取るかによって、効果が大きく変化します。

─今後、予定しているアップデートはありますか

モバイルへの対応を強化し、スマートフォンでもスムーズにメタバース空間内を歩けるようにしていきます。

さらにBtoCイベントや細かいカスタマイズにも対応し、よりリッチな世界観の構築を目指します。

将来的には日本国内のメーカーがメタバースを通して海外バイヤーへ気軽にテストマーケティングを行ったり、逆に海外出展者が集結するイベントへ日本のバイヤーが来場したりと、メタバース上でビジネスの新しい出会いが生まれる場を提供していきたいと思います。
 

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