日本への事業展開と将来への展望―「SMART MANUFACTURING SUMMIT BY GLOBAL INDUSTRIE」(SMS)開幕に寄せて GL events Venues CEOおよび会長 クリストフ・シゼロン 氏

2024年3月、欧州で最大級の産業展示会「GLOBAL INDUSTRIE」の日本版、「SMART MANUFACTURING SUMMIT BY GLOBAL INDUSTRIE」がAichi Sky Expo(愛知県国際展示場)で開催された。近年、世界でも有数のブランド力を持った大規模展示会の日本開催が相次いでおり、SMSの開催は国際展の流入をさらに呼び込むだろう。GL events Venues・クリストフ・シゼロン氏に、SMSを皮切りとした日本での展望と、世界各国の事業について聞いた。

(左)GL events Venues クリストフ・シゼロン会長、(右)愛知国際会議展示場 モルガン・ショドゥレール代表取締役社長

地域の長所をイベントに起こす
―SMS初開催の背景、会期を迎えた心境をお話しください
Aichi Sky Expoの運営を任されたときから、SMSの立ち上げを決意していました。会場のある地域を活かすイベントを作ることは、我々の使命であり、愛知県は日本の産業の中心地と捉えています。また当社は屈指の規模を誇る産業展「GLOBAL INDUSTRIE」を仏で毎年行っていることから、産業や物流をテーマとした展示会について、ブランド力とノウハウを持っています。「GLOBAL INDUSTRIE」日本版の新設は必然であり、すでに開催は成功だと感じています。

日本での事業展開について
―日本の展示会業界に抱いている印象はどのようなものでしょうか
日本の市場の特徴を世界と比較すると、全体の経済力に対してイベント業界の規模が小さいと感じます。また日本のイベント業界は、伝統的なやり方を少し守り過ぎているのではないでしょうか。しかしこれは進化の余地が残された市場であるともいえます。
SMSの開催による新しい展示会のスタイルの提案は、まさに日本のイベント業界にイノベーションを引き起こす、ヒントのひとつになると確信しています。
今後日本のイベント業界の成長に、私たちがいかに貢献できるか非常に楽しみです。GL eventsだからこそ提供できる価値を日本に届けます。

―今後の日本での事業展開、意欲について教えてください
今年の9月には世界的ファッションイベント「TRANOÏ」の東京での初開催が決定しています。また今回のSMSを契機として、新しいプロジェクトの構想もあります。特に飲食と飲料の新規展の開催を前向きに検討しており、自主開催のみならず、関西・大阪万博やアジア競技大会を含め、既存のイベントへの参画についても視野に入れています。
さらに、他の展示会場の運営委託にも興味があります。世界各国の自治体から、展示場の管理運営を任されている実績はGL eventsグループの強みです。Aichi Sky Expoのように、日本各地の展示場について、委託運営・コンセッションを積極的に展開していきたいです。

トレンドを分析世界での事業拡大を狙う
―運営を行う世界の会場について、最新ニュースはありますか
アフリカ・コードジボワールのアビジャンで新たな展示場の管理委託を獲得し、中国の新規会場の契約についても準備が進んでいます。拡張はブラジル・サンパウロの会場で大規模な拡張工事が終了します。フランス・パリまたリヨンの拡張事業も計画通りに進行しています。

Anhembi District

―新規のイベントについてはいかがでしょうか
我々グループは年間4000件もの催事を受け入れ、新規のイベントも立ち上げています。来訪者数はのべ1500万人。つまり新しいイベントについては常にアイデアを巡らせており、必ず世界中のどこかでいつもイベントを生み出し続けています。特にグループ全体の戦略としては「飲食・飲料」「ファッション」「産業」「GX」といった4つの分野に分かれ、事業を展開しています。
ここ近年の売上の推移を俯瞰すると、コロナで打撃を受けた2020年から2023年になって回復を遂げることができました。その回復の流れの中にSMSの開催も位置づけられており、今後も引き続き良い成長の流れを作っていきます。

―サステナビリティへの取組みについて教えてください
グループ全体の方針として「エネルギーコストの削減」と「消耗品の削減」を掲げています。2023年は昨年のエネルギー消費量と比較して、30%減を達成しました。これは単に名目上の30%ではなく、売り上げに対する比率も含めての数値です。合計で107万㎡の空間を管理している点からも、この30%がいかに世界のサステナビリティに対して大きな意味を持つかがわかるのではないでしょうか。
次の目標として、展示会のカーペットやブースを含む消耗品の25%減を設定しました。現在、同じグループ会社のGL events Liveやイベント事業者とともに、環境配慮に取組んでいます。イベントの資材は環境負荷の低い材料を優先的に使い、ブースや部材はできるだけ再利用を行っています。

―今の課題、事業の展望をお話しください
SMS終了後、世界中の会場57カ所の社長をフランスに招き、セミナーを開催します。主なテーマは「持続性・環境対策」と付随する「エネルギーパフォーマンス」、「DXとAI」です。さらに重要な課題として「人材の育成と運営」が設定されています。どのように社員に新しいスキルを手渡し、長期の視点で成長を促すかを共有します。
セミナーでは社員同士の交流を通じて、各地のビジネストレンドの分析も行います。トレンドを催事や会場運営に反映できるよう努めていきます。

[Report]SMART MANUFACTURING SUMMIT BY GLOBAL INDUSTRIE
GL events Venuesは3⽉13⽇から15⽇の3日間、「SMART MANUFACTURING SUMMIT BY GLOBAL INDUSTRIE」(SMS)をAichi Sky Expoで開催した。⽇欧を含む40カ国から246の出展社が集結し、製造業の課題解決を図る製品とサービスを紹介した。展示のほかにもセミナーやスタートアップ企業の出展ゾーン、デモンストレーションのゾーンを会場内に設置し、⽇本初のスマート製造業総合イベントとして、多方向からソリューションを提案した。
 初日に行ったオープニングセレモニーではGL eventsのオリビエ・ジノン会長が挨拶。愛知県・大村秀章知事に催事協力の感謝を述べるとともに「SMSは日本と仏、EUの戦略的パートナーシップの枠組みの中で開催され、EU諸国と日本の産業協力を表す前例のない催事。商談や講演を通し、持続可能な産業の未来について解決策が考案される」と催事への期待を述べた。また「今回の開催は第一歩目に過ぎない。これからインダストリー5.0やロボティクスをはじめとしたテーマを通し、日本と仏、愛知県、イベントにかかわるすべての地域とともにSMSを発展させていきたい」と展望を語った。
会期3日間で1万72名が来場した。次回2025年開催は6⽉に開催予定。