【寄稿】東京モーターショーに見る来場者に訴求するブランディングデザインとは / 空間演出デザイナー 仁木洋子

DSC_0206東京モーターショー2017」が閉幕した。来場者の楽しみは、新型車やコンセプトカー、未来のクルマなどをいち早く見られること。もう一つの魅力は、世界のクルマブランドが一同に集まることである。そこで今回は、一流のブランディングデザインを検証したい。
ブランドの語源は、見た目が一緒の家畜を区別するために焼印を押す意味から、「銘柄」「商標」を「brand(ブランド)」と言うようになったように、「区別すること」がベースにある。人々の記憶にブランドをしっかり残すために、各社はしのぎを削っている。

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◆ブースの視認性、商品とブランドをつなぐデザインの力

ブース訴求の基本であるブランドサインの表現では、遠距離・中距離・近距離の3つの視認性が必要とされる。
遠距離視認性とは、会場の遠くからでもはっきりとそのブランドだと認識でき、誘導するための大型のLEDサインやパイロンサインなどのデザインや位置である。
中距離視認は、ブース近くでのそのブランドの見え方や雰囲気のことで、東京モーターショークラスになると、メイン通路幅が10メートルを越えるため、2000㎡クラスの空間を自由自在に想像の世界で歩くことができる間違いのない力や経験がデザイナーに要求される。今回の会場でも、通路に立つと、ブースサインが視界から消えてしまう、という明らかにパソコン上でのサイン位置の検証だったのでは、と思われる失敗例をいくつか目にした。

 

◆商品をブランドイメージと結びつけて記憶に残す

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左サイドからクルマを撮影/後ろにスリーポイントスターのマークが映る

近距離視認は、商品とブランドの関係である。人間はビジュアルから得る情報が多いために、ロゴを効果的に使って、そのブランドの「顔」を印象づけるのである。
メルセデス・ベンツのブースは、どの位置からクルマを撮影しても、ロゴが映るように緻密な計算をした上で、ロゴマークが配置されている。これは、来場者が上げるインスタグラムなどでの広告宣伝効果としても重要なことである。

来場者にブランドをストーリーやシーンとして魅せて記憶に残すことが出展した効果で、無形の企業価値である。そして、顧客に「これが欲しい」と思わせるために、ブースのデザインイメージが必要となる。

 

右サイドからブースを撮影/会場が混んでいてもマークが見える

 

 

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見本市展示会通信12月1日/12月15日号を元に再編集)

 

【写真B-1】仁木洋子 Yoko Luna Niki

空間演出デザイナー、プロデューサー

www.illuminat.co.jp

 

(株)イルミナティ 代表取締役

ライティング・オブジェ制作委員会 代表

 

熊本市生まれ。多摩美術大学卒業。世界各国でのモーターショーブースデザインや人に夢と感動を与える空間の演出、プロデュースを行う。地球環境・資源保護に配慮したその仕事は、欧州でも評価され国内外で活躍。2006年から東京丸の内周辺で毎年12月に光のアートチャリティ「ライティング・オブジェ」展を主催し、12年目を迎える。2011年から東日本大震災、2016年から熊本地震の復興支援チャリティも行う。2012年7月の「明治天皇百年祭〜心のあかり」明治神宮夜間特別参拝のデザインでディスプレイ産業優秀賞、ほか多数受賞。