コロナ禍における大阪ディスプレイ協同組合の取組みと展望

新型コロナウイルスにより2020年の展示会やイベントが中止・延期となったことで、会場やブースの装飾を担うディスプレイ業界は大きな痛手を被った。そのような中、大阪ディスプレイ協同組合は現状を打破するためにいち早く行動を起こし、コロナ対策特別委員会を立ち上げた。コロナ禍の影響や、委員会の活動内容について話を聞いた。

見本市展示会通信 第838号/11月15日号 掲載)


●出演者
大阪ディスプレイ協同組合 理事長 永田 智之 氏( フジヤ)
コロナ対策特別委員会 委員長 衣川 正一 氏( キヌガワ)
コロナ対策特別委員会 担当副理事長 水上 琢也 氏( 白水社大阪支店)
コロナ対策特別委員会 担当理事 堤 裕成 氏( シーマ)


左から衣川氏、水上氏、永田氏、堤氏

新型コロナウイルスにより
ディスプレイ業界に被害が

―大阪ディスプレイ協同組合(ODA)とはどのような組合なのでしょうか

永田 ODAは1970年大阪万博の開催決定をきっかけに、業界が一丸となって新たなスタートを切るために1963年に設立しました。ディスプレイを通じて生活文化の向上を図るとともに、ディスプレイ産業の健全な発達による消費経済の合理的な発達および国土景観の発揚に寄与することを目的としています。全国にあるディスプレイ業界団体の中でも57年と特に長い歴史を有しており、今日では展示会やイベント、商業施設などにおける企画・設計・施工など組合員95社、賛助会員34社の計129社が所属する東京に次ぐ規模の組合となっています。

―新型コロナがディスプレイ業界にどのような被害を与えたかを教えてください

水上 白水社は商業施設の設計や施工を主要事業として行っており、展示会やイベントが全体の2割程度であることを鑑みると、ディスプレイ業界の中では比較的被害が少なかった方だと思います。
というのも、商業施設の事業は展示会やイベントとは異なり、長期スパンで行うため、コロナ禍においても受注残もあり、6月頃までは縮小はあるにせよ、一定の売上は確保できました。しかし6月以降の新規案件が延期・中止となり大きなダメージを受けているのが実情です。ですので、非常に厳しい状況下であることは他社同様であります。
それに加え、われわれの主要な顧客は百貨店など小売であり、売上が落ちることで投資が減少し、計画が中止になるなど被害が長引く可能性が高いとみております。
さらに、これが最も危惧すべきことですが、同業者による仕事の奪い合いが激化し、過度な価格競争も生まれてしまっています。

 シーマではイベントにおけるLEDや映像機材レンタルが事業の過半数を占めています。新型コロナの被害に対しては雇用助成金で調整を行っているところですが、本来であれば2020年は五輪イヤーだったこともあり、用意した機材の多くが行き場を失っている状態です。現時点でも来年の東京五輪がどうなるかが見えていませんので、先行きは不透明と言えます。
最近ではオンラインイベントが注目されていて、シーマでも可能な限り対応していますが、正直単価が安すぎてビジネスとしては難しいというのが本音です。やはりイベントをビジネスとして成り立たせるには、集客が必須でしょう。

衣川 コロナ禍でイベント・展示会で使用する床材・壁装材・サイン資材の売上が前年比40〜45%まで落ち込みました。堤氏も仰っていましたが、東京五輪を見込んで仕入れた商材をキヌガワでも持て余しています。
一方で比較的被害が少ないのは看板ですね。また日本全国で見た場合、東京、大阪、名古屋の落ち込みが大きいのに対し、九州は比較的軽微でした。

永田 フジヤの事業は展示会やイベントが7割程度を占めています。3月は開催こそないものの既に手掛けていた仕事がありましたが、4月から6月にかけての3カ月間は軒並み中止となり被害が甚大でした。
そのような状況の中、被害を受けて休業体制を取りましたが全面休業とはせず、影響が比較的少なかった商業施設などの部門はほぼ出社していました。7月以降は徐々に展示会やイベント部門もコロナ禍でもできる活動を増やし、今は8割以上がテレワークを交えながら出勤しています。
まだまだ現場は少ないですが、リアルとオンラインのハイブリッド開催などを提案しつつ、狭まった仕事をシェアしながら雇用を守っていきます。