寄稿 ポストコロナ:展示会・イベントはどう変化するか? 寺澤 義親 氏

デジタルソリューションやオンラインイベントが増加するか:
今後、新しいスタイルが確立するまでは、これまでの出展者・来場者数を維持することは難しくなり、現実的にはその数が減る可能性が高い。ポストコロナにイベントの形が今後どう変化していくのか予測するのは難しいが、リアルの効果を維持しながらの収支対策としては、リアルイベント規模の縮小、またはオンラインイベントへの変更があり得る。もちろんオンラインイベントも企画内容と規模によっては、必ずしも経費減にならない可能性が高い。

国内では例えば「東京ゲームショウ」(9月24日~27日)や「Interop Tokyo」(4月13日~6月30日)は、オンライン開催に変更されている。海外では今春のロンドン、ミラノ、パリの「ファッションウイーク」もリアルの替わりに、デジタルプラットフオームで開催されたが好評だったようで、2021年春夏シーズン(6月)のミラノ、パリも同じくデジタルイベントになると発表されている。
さらに中国の商談展示会としては最大規模の「広州交易会」は延期されていたが、6月15日から24日にオンライン展示会として開催されることになっている。

しかし、既存イベントが一挙にリアルからデジタルへの変更することは現実的ではなく、リアルとオンラインイベント併存への変更が考えられるし、そうした方向が増えるのではないか。その結果、展示会イベントの形と規模はこれまでとは違うものになるだろう。
これに該当するケースとしては、今やコンシューマーエレクトロニクスだけでなく、テック系のイベントとしても名高い「IFA2020」(ベルリン、9月3日~5日)は、一般公開しない形で入場者数を5000人に限定し、会期も1週間から3日に短縮して開催される。各セッション1日当たりの来場者数が1000人を超えないように抑え、招待客だけのリアルイベントとして開催すると発表されている。
同時に50か国から800人程度のジャーナリストを招聘し、グローバルコンファレンスを開催する他、イベントの一部を体験できる、仮想空間「バーチャルIFA」も開催する。

さらにテック系のイベントとしては注目度の高い「CES2021」(ラスベガス、1月6日~9日、2021年)は、リアルイベントとオンラインイベントの組み合わせにすると発表されている。感染防止策として各種イベントは中止されるほか、展示エリアの通路は広げられ、講演やデモ会場の座席間隔をあける、物品販売ではキヤッシュレス決済を導入、会場入り口に検温装置・会場内に健康・医療サービスを拡充するなど、衛生対策を徹底して参加者の健康を維持するとしている。
リアルイベントの他に、基調講演やデモのライブ配信を拡充することに加えて、出展者がリアルとネットの両方で製品や技術を紹介できるようにする、なお出展ではコロナ禍の影響の解決につながる技術特集も検討すると主催者が発表しているので楽しみだ。

企業イベントが増えるなかで展示会の費用対効果が問われる
B2Bの展示会やイベントにとっては、これまで以上に企業イベント(プライベートショウ)が競合することになるのではないか。
出展企業もコロナ禍で展示会の延期・中止が続く中で、展示会以外のマーケテイング手段を選択することになり、出展する展示会を絞るといった対応を今後1年間程度は取ってくると予想できる。新たなマーケテイング手段としては、デジタル手段の選択や企業独自のイベントが確実に増えてくると考えられる。

一方、企業の予算も縮小される可能性が高いこと、さらに延期または中止になった展示会の復活には1年以上の時間がかかり、今後しばらくは出展する展示会も絞られてくる傾向が強くなる。そのため費用対効果からは、その業界においてどうしても外せない展示会イベント(MUST-Event)でないと生き残りが難しくなるのではないか。
例えば時計・宝飾で有名な「Basel World」は延期後の2021年1月28日~2月2日に開催予定していたが中止を決定した。これはコロナ禍の影響もあるがこれまで大手の出展企業だったSwatch Groupが2019年から撤退しておりさらにRolex,Patek Philippe,Chanelなど有力なブランド企業がそろって撤退を決めてプライベートショウを選択したことが最大の理由である。