20年以上、展示会輸送に特化した輸送会社として活躍してきたブルーライン。近年は多角化経営に取り組み、輸送以外にも力を入れ更なる飛躍を目指している。
今回は代表取締役社長の笹原敏弘氏に、今後の展望について話を聞いた。
(※本記事は新聞「見本市展示会通信」(2024年4月15日号)に掲載された内容です)
危機に強い会社へ
―これまでの経歴、経緯について
私の学生時代は、中国が経済解放に舵を切ったことで急成長してきている時期でした。大学で中国語を学んで北京師範大学へ留学し勉強している中で、北京モーターショーで通訳のアルバイトをする機会があったことが展示会輸送との出会いです。
日本企業の自動車を含むありとあらゆる工業製品が中国に入り込み、現地に工場を作るという時代でした。
中国の成長を目の当たりにする機会を得られたのは大きな収穫です。大学を卒業する時には、自然と輸送関係、中国や世界を向いた輸送会社での就職を考え、日系の輸送会社、外資系の輸送会社を経て、ブルーラインに入社しました。それが約21年前になります。
―ブルーラインの紹介をお願いします
ブルーラインは展示会や見本市、様々なイベントに関わる輸送会社から始まりました。日本のお客様が海外の展示会に出展する、万博やオリンピック、スポーツイベント等に参加、そしてそこに自社製品を展示する時の輸送全般のお手伝いです。
お客様の工場から貨物を集荷し、梱包工場で特殊な梱包箱を作成、展示会場やイベント会場まで届け、ブースへの配送もブース施工会社のご担当者の方とタイミングを調整して、搬入、梱包箱の開梱や設置を行います。
産業によって、また国によって規制や法制度が異なりますが、通関事情、作業員組合などとの調整も全て管理します。もちろん出展者様や、装飾業者様でもノウハウがあるので、その時は全ての情報を共有しながら進めていきます。
展示会輸送とは、日本のお客様が海外で出展する場合もあれば、海外のお客様が日本での展示会に出展する場合もあり、業界ではAway GameやHome Gameなどと言う言い方もします。
コロナ前はAwayが70%、Homeが30%でしたが、現在はHome Gameの割合が増えてきています。
―コロナ禍を経て変化はありましたか
展示会輸送で18年近く右肩上がりで業績を伸ばしてきましたが、初めてコロナという打撃を受けました。
この展示会業界全員が迎えた暗黒の時代です。全ての仕事が止まり、社員全員の仕事が無くなりました。大変残念でしたが、弊社は忸怩たる決断を致しました。人員の整理解雇でした。もちろん私自身を含む大幅なコスト削減をしましたが、それでもカバー出来るものではありませんでした。本当に今でも情け無さと悔しさの気持ちがあります。
これを契機に、会社を大きく方向転換させました。『次に来るどんな不況にも耐えられる会社、社員と家族を守ることができる会社にする!』と。コロナは自然災害的のようなものですから、今後もこういったことがあるかもしれない。その時にまた同じことをするわけにはいきません。
まず、その時進行中であった会社保養所の建設計画を取りやめて、収益不動産物件の購入を始めました。不動産事業部の設立です。
これは海外のお客様が日本の不動産を購入するときの仲介をさせて頂いたことがきっかけで始まった事業で、コロナ以前から海外個人投資家への不動産取扱事業は行なっていましたが、コロナをきっかけに国内での不動産売買、賃貸などを大々的に始めました。今では会社の収入の10%を占めるようになっています。
次に、官公庁事業部です。こちらもコロナ以前からやっていましたが、長年の経験を積んだ専門の社員を入れサービスの向上を図り、更にはそこに関わる業務内容を拡大させるために、旅行業の免許も取得しました。
官公庁事業部は完全に旅行業も兼ねており、この旅行業は展示会出展のお客様の海外渡航時の航空券予約、ホテル手配、レンタカーをまとめて手配可能です。お客様の貨物だけでなく、担当者の方まで安全に迅速に展示会場までご案内します。この事業部も会社収入全体の25%を占めています。
そして最後は、日本酒等の委託醸造から販売をする事業です。こちらは詳細をお話できる時期ではありませんので、追ってホームページとインスタグラムでアップしていきます。
他業種にも生かす
―御社にとっては、コロナは大きな打撃、損害でもあった訳ですが、それが大きな岐路になったのですね
危機こそチャンスです。先程お伝えしたとおり、事業展開を広げることにより、更なるビジネスチャンスが増え、大きなチェンジをしました。
―それは代表取締役をお二人から一人に変えた事でしょうか?
それも一つです。経営判断の迅速化。更には、会社をホールディングス制にしました。ブルーラインホールディングス社の下にブルーライン、日本酒委託醸造・販売会社などが連なります。
タイ王国海軍航空基地内のグランドハンドリング会社もその一つで、官公庁事業部との連携を予定しています。今後はフィリピンのクラーク基地への展開も考えています。
東南アジアに行くと中国語って結構通じるんですよ。アメリカ、ヨーロッパに比べると習慣がアジアに似ているので、ビジネスが実現するのも早いです。
ホールディングス社の資本金も大きくなりましたので、今後まだまだグループ会社が増えると思います。
―もう輸送会社ではないのですか?
ブルーラインは、展示会イベント輸送に特化した輸送会社。コンサートに関わるロジスティックにも特化しています。ただグループ会社は色々な事に挑戦しています。
新事業は、すべて海外とのやり取りの中で先方から「こんなことができないか」という希望を頂いてきたことが、立ち上げのきっかけになっており、他にもM&Aで異業種の会社との話は進んでいます。
基本的に相手企業に対しては「今までやってこられたこと、培わられた経験・知識・知見は、社名も含めてそのまま残してください。海外関連など僕らが得意とするところをプラスアルファで入れます」といった考え方がベースにあり、それが、会社をホールディングスという形式にしている理由の一つでもあります。
―多角化経営の他に御社の特徴をあげるとすれば、どういった点になるでしょうか
IELA(International Exhibition Logistics Association)に属していることは一つあると思います。
資本・実績・メンバーの評価など加入の審査がとても厳しいのですが、協会の国の出展者が日本の展示会イベントに参加する際の案件が大きく増えました。
―展示会輸送に関する最近の傾向を伺えますでしょうか
去年の秋ごろから急激に問い合わせ件数が増えました。日本のお客様も、コロナの期間中に他国の競合企業に出遅れた分を取り戻すため、積極的に出展しています。輸送が必要な貨物量も増加しており、今後、数年間はこの趨勢が続くと思っています。
国別でみると、中国への出展は現在、数としては少ないです。中国政府が日本人渡航への簡易ビザ、入国を認めていない件、スパイ容疑での監禁の恐れ、日中(米中)関係の脆弱性。この3つが大きい。
最近は弊社ですとヨーロッパが多く、特筆すべきところで言うと中東が多くなりました。UAEなどでの企業独自のプライベートイベントも活発です。インドも増えましたね。
―今後の見通しと展望について
展示会業界の未来は明るいと考えています。展示会輸送もどんどん増えてきていますので、この流れに乗って業界一番手と呼ばれるように頑張っていきたいと思ってます。
運転手不足問題、現場作業員不足など、解決しないといけない部分はありますが、ブルーラインとしては、いまのこのチャンス、お客様のニーズに応える事により、メイン事業の足固めから、更なる飛躍へと躍進出来ればと思っております。
展示会輸送という基本の部分を磐石にしながら、あとは何があっても倒れないように第2、第3の柱をホールディングの中で作っていって、50年、100年経っても続けられるような会社になれたらいいなと思ってます。100年経ったら僕は当然いませんけど、そうやって後継に道を譲っていければ一番いいんじゃないかなと思いますね。
(※本記事は新聞「見本市展示会通信」(2024年4月15日号)に掲載された内容です)