MPIリレー連載7 金井 大三氏/~インセンティブ効果の可視化=経費~投資観点へのシフトチェンジに向けて

週刊ホテルレストラン × 展示会とMICE 
週刊ホテルレストラン×展示会とMICE 合同企画

MPIリレー連載 

第7回 金井 大三さん 

   ㈱JTBコーポレートセールス 営業推進本部 営業推進局 スーパーバイザー
   MPIジャパンチャプター メンバーシップ委員会 委員長
   東京都知事認定外客誘致メンバー

【略歴】
(株)日本交通公社(現ジェイティービー)入社。MICEの“MIC”を中心とした企画・運営に携わり、現在は社内の人材育成と新たな事業モデルの開発を担当。社外においては講演会・大学の特別講座も行なっている。

旅行会社にとってのMICE(インナー領域のインセンティブ)の未来
“インセンティブ効果の可視化=経費~投資観点へのシフトチェンジへ向けて”

【はじめに】
2007年観光立国推進基本法が施行されるとともに、2010年新成長戦略において観光は日本の成長エンジンの中心に定められ6年の月日が流れた。中でもMICEは年々注目度が高まり、経済界でもある程度の市民権が得られ始めている。今回はI(インセンティブ)の現状の課題と成長へのヒントを考察していきたいと思う。

【インセンティブの意義・目的】
そもそもインセンティブは何故行なわれるのか?
「参加者は現金を与えられた方が嬉しいのではないか?」こんな声は顧客からも未だにある。そんななか、先日某社に営業に行った際に「御社の今回の目的は何ですか?」と質問をしたところ、「毎年やっているから…」と不安になる回答をいただいた。(職場旅行であれば納得もできるのだが)

ここで、インセンティブの目的と効果を再考してみたい。弊社の考え方で恐縮だが、

【企業が主催し、参加者のモチベーション向上にフォーカスするモチベーションイベント】、と定義し、「何を伝えるか?」はもち「如何に伝えるか?」がイベント価値を左右するものとして重要視している。また最大の効果としては、“参加者のモチベーションの内発化の醸成”・“働きがい/達成感/使命感”の喚起である(加えて受賞できなかった参加者のチャレンジ精神を刺激することも重要=インセンティブバーの設定ラインの考え方)。

主催者・対象者により目的(GOAL)は千差万別であるが、KPI(定量・定性の両輪)を企画段階で設定することが、成功への第一歩であることは間違いない。
【インセンティブ効果の最大化に向けた要素】
先に意義・目的について着目したが、成功へ導く重要な要素は以下となる。

①    ハード面(ベニュー中心)
過去を振り返ると大型宴会場での開催が中心であったが、マンネリ化を避けるために、ユニークベニューの問い合わせが飛躍的に多くなっている。最近では石川県の金沢城など過去には考えられなかった場所での開催も可能になってきている。共通して言えることは、官民一体となり開発に取り組んでいるエリアだ(観光庁もユニークベニューに関しては今後本腰を入れて取り組んでいく予定)。旅行会社は無理だと決めつけずに主催者側の想いを具現化すべく地道な交渉力を持つことも今後必要になるであろう。

またホテル内演出もちょっとした工夫(長岡の花火大会を会場内360度のパノラマ映像でオープニング演出など)で箱売りから脱却し、新たな価値提供が可能になる。

②    ソフト面(運営中心)

今までの旅行会社のインセンティブ取扱いにおいては調達面を中心に対象者ごとに効果的な知見を発揮してきたが、今後はヒト・モノ・ココロを動かすインセンティブコンサルティングに進化する必要がある。

たとえば
●事前に過去開催のレビューを行い(右図:社内イベントに関する調査レポート抜粋:JTBモチベーションズ提供)、正しい方向性を見極め、企画段階から慎重にイベント内容を設計していく。

●特別表彰者に対しては料飲の好き嫌いを把握し、特別コースを提供する。

●サプライズで家族に登壇いただくなど、参加者へのホスピタリティ提供を主語にする。以上に力点を置くだけでも(or注意を払うだけでも、or以上を見直してみるだけでも、など)成長の余地はまだまだある。

 

とにかく、表彰者からWOW!の言葉を、どれだけ得られるかに対して知恵を絞り込むこと

この点に拘り続ける事が効果の最大化にとって重要な要素の一つとして構成される。

 

【まとめ】

まとめになるがROI(投資対効果)を可視化・向上させる為に、

1、プランナー・サプライヤーはゴールを必ず共有しコストではなく投資観点で捉えること
(プランナーは社内関係者・参加者へ、サプライヤーは社内オペレーション担当・現地スタッフへ対して正確な情報伝達を行なう)

2、企画~実施~終了後までの各ステージにおいて目標・目的をぶらさないこと
(旅行会社は受注~実施~終了まで事務局以上のパッションを維持する)

3、終了後は清算書の提出のみではなく、当初目標・目的に対する効果測定を実施すること
(プランナーは社内での説明責任を果たし、サプライヤーは次のPDCAへ展開)

“金の清算”~“質の清算”へ→“インセンティブ効果測定の実施”

(下図インセンティブアンケート企画書での提案例)

1~3を実行することにより、単発の案件ではなく事業として展開が可能になり、実施企業の中長期的な戦略の共有が可能となり、サスティナブル(持続可能)なビジネスパートナーへと変貌していけるものと確信する。

また、旅行会社・ホテル双方のパートナーシップを更に強固(受発注の関係でなく)にし、顧客への価値提供を加速させる事が、業界の今後の浮沈の鍵を握る事はいうまでもない。