寄稿 新型コロナウイルス禍終息後、オリンピック終了後の展示会産業を考える 桜井 悌司 氏

▼1.コロナ禍・オリンピック延期問題に関する大まかな経緯

当初のオリンピック問題に関しては、日本展示会協会(日展協)は種々の提言や要請を行った。「国際放送センター」(IPC)や「メイン・メデイア・センター」(MPC)は、東京ビッグサイト内ではなく、ロンドン、北京、リオのオリンピックのように別途仮設の建物内で設置するという最大の要望は、実現しなかったが、仮設の展示場である青海展示棟(要望より規模は大幅に小規模であったが)は東京都によって建設された。工事期間・使用期間の短縮もある程度実現された。その結果、展示会業界にとって、決して満足すべきものではなかったが、一応の落ち着きを見せていたし、関係企業もそれぞれの解決法を見つけつつあった。

しかしながら、2020年2月頃から徐々に、新型コロナウイルスの影響が出始め、2月後半頃から、出展者、とりわけ海外からの出展者のキャンセル、来場者の減少傾向が出てきた。3月になると、大規模な国際見本市であるFOODEXの中止等顕著な影響が出るようになり、ほとんどすべての展示会がキャンセルされるに至った。さらに3月24日には、IOCによって東京オリンピックが1年延期されることが発表された。4月7日には、緊急事態宣言が、政府によって発表され、5月6日までの外出自粛規制や展示会等大型イベントの開催自粛が要請された。それによって、4月及び5月の展示会もキャンセルないしは延期となった。緊急事態宣言は、当初、5月6日までの外出自粛の要請があったが、5月4日、更に5月31日まで延長されることになった。これにより、6月中の展示会開催もなくなった。その後、5月25日に緊急事態宣言が前倒しで解除され、イベントや展示会も規模に応じて徐々に再開されることになった。さらに6月11日には、東京都の小池知事により、東京アラートの解除が発表され、休業要請は6月19日から、国と足並みを揃え、全面解除となった。第3フェーズまでの展開が可能となったのである。第3フェーズでは、遊園地、ネットカフェ、パチンコ店などが含まれ、飲食店も午前0時までの営業が可能となった。しかしながら、従来のような展示会は、おそらく8月くらいまでの中止ないしは延期になることが想定される。コロナウイルスの第2波、第3波も想定されることもあり、最後まで予断は許さないと考えたほうが良いであろう。

オリンピックは1年延期になったが、すでに安倍総理がIOCやG’首脳と合意したような完全な形での開催は断念し、簡素化する方向で進行している。オリンピック・パラリンピックについては、主催国でのコロナウイルス問題が解決するだけではなく、参加国での感染動向も考慮に入れる必要があるので、最悪中止ということも視野に入れておくべきであろう、

国内観光も少しずつではあるが、再開に向かっている。大阪のUSJは6月8日に、3か月ぶりに営業再開した。東京ディズニー・ランドは7月1日に、サンリオ・ピューロランドも7月20日より再開される。ただ、旅館ホテル、旅行代理店、バス・鉄道・航空会社などの利用は、回復までに相当の時間が必要である。

MIC産業は、コロナ問題がメインであるが、展示会業界は、オリンピック問題・1年延期問題とコロナウイルス問題という2つの難敵に対処しなければならないのでより一層困難な状況と対峙しなければならない。

桜井 悌司 氏
現在、一般社団法人ラテンアメリカ協会常務理事、NPO 法人イスパニカ文化経済交流協会理事長他。1967年4月ジェトロ入会後、41年にわたり、輸出振興、輸入促進、投資誘致等の業務を経験。投資交流部次長、展示事業部長、監事に就任。展示会・博覧会事業については、約10年間にわたり、海外。国内での多数の展示会組織、セビリャ万国博覧会日本館、大田世界博覧会日本館の運営に従事した。2003年、日本展示会協会より、人材育成部門での貢献により「日展協 Awards」を受賞。海外勤務中、イタリアのミラノとブラジルのサンパウロでは、年間 40~50 本の展示会を視察。2008年、ジェトロ退職後、関西外国語大学外国語学部教授として、2015年まで勤務。2015年7月から2016年8月まで、日本展示会協会事務局長として勤務し、事務局発信コーナーを通じ、「日本の展示会産業の歴史」、「新規展示会の立ち上げ状況」、「地方の経済産業団体による主要展示会への参加状況」など多数のレポートを執筆。