国立劇場が10月でいったん閉鎖 2029年向け建て替え

「国立劇場 国立演芸場 閉場記念式典」が10月29日、国立劇場で開かれた。伝統芸能の拠点である国立劇場は、開場から55年以上が経過し施設の老朽化が著しいため、令和5年11月から令和11年秋ごろまで建て替え工事を行う。

新たな国立劇場では、伝統芸能と人との何気ないふれあいや人と人との出会いの場を設けるとともに、客席での鑑賞だけではない新しい鑑賞・体験・参加の機会を提供、劇場を飛び出して、様々な機関と連携し活動の場を広げることも試みるという。

以下、独立行政法人日本芸術文化振興会 資料「未来へつなぐ国立劇場プロジェクト~新たな国立劇場がめざすもの~」より新事業の概要。

【事業の実施プラン】

1 地域環境と調和した魅力あふれる文化観光の拠点として

新たな国立劇場は、民間企業が経営する施設を併設し相乗効果を発揮して、魅力あふれ賑わいのある文化観光の拠点となることを目指す。

皇居の緑につながり四季折々の顔を見せる前庭、スムーズなアプローチ、多機能なオープンスペースを持つ劇場に加えて、レストラン、カフェ、ホテル等が一体となり、多様な文化観光ニーズに対応。

観劇や観光、ビジネス等で訪れた方々、地域の方々など多くの人々が集う開かれた場は、緑豊かな環境と調和し、思い思いの時を過ごせる魅力的なランドマークとなり、周辺地域と連携して賑わいを生み出す。

2 伝統芸能の伝承と創造の拠点として

(1)ふれあいと交流の広場

愛好者だけでなく、これまで伝統芸能に触れた経験のない方や少ない方、例えば、青少年・親子・社会人・外国人・障害者など、多様な人々が伝統芸能を介して出会い、楽しみ、学び、交流することのできる、ふれあいと交流の広場を創設。公演のない日でも、食事や喫茶の目的だけでも、あまり時間がないときでも、いつでもだれでも気軽に立ち寄れる空間。

この広場では、見て・聞いて・触って遊べる体験型・体感型・参加型の展示のほか、調査研究や資料収集の成果を展覧する様々な企画展示を行う。また、図書・資料の閲覧や公演記録映像の視聴等ができるレファレンスサービスを提供するほか、ミニパフォーマンスやコンサート、ライブビューイングなどを開催。あわせて、ガイド付き劇場ツアーや XR などのデジタル技術を活用したイベントなども実施する。

(2)多様な伝統芸能を未来へつなぐ公演

伝統芸能の上演に最適な舞台・楽屋設備、最新の安全な舞台機構、快適な客席やホワイエを備えた新たな国立劇場は、大劇場・小劇場・演芸場の三劇場において、歌舞伎・文楽・日本舞踊・邦楽・雅楽・声明・民俗芸能・琉球芸能・大衆芸能など多ジャンルにわたる、良質な主催公演を企画、開催する。

それによって、実演家やスタッフが技芸や技術を継承する機会を確保し、そのジャンルの最高峰の公演実施を目指すと同時に、新進実演家の技芸向上の機会である若手主体の公演やコンクール等も継続、拡充していく。

一方、愛好者から伝統芸能に全く触れた経験のない人たちまで、多様な人々の伝統芸能へのアクセシビリティ向上を目指し、公演形態・内容の多様化を図り、伝統芸能への興味や関心を喚起して、鑑賞と出会いの場を提供する。

歌舞伎・文楽においては、作品そのものをより深く楽しめるように、起承転結を備えた通し狂言の上演を主としつつ、文楽では、有名作品の一部を並べて上演する見取り形式の公演も開催。

日本舞踊・邦楽・雅楽・声明・大衆芸能などのジャンルでは、多種多様なテーマ設定や公演内容により、古典作品の鑑賞機会の充実、技芸の継承も推進。

現地でしか見られない民俗芸能や琉球芸能についても、ふれあいと交流の広場からの情報発信や地域との連携などに努め、それぞれの芸能の伝承と普及に資する公演を着実に実施していく。

初代国立劇場では、歌舞伎・文楽を中心に、その芸能の特徴やあらすじの分かりやすい解説を付けて有名作品を上演する鑑賞教室公演を実施し、好評を得てきた。

次のステップとして、名作ではあっても鑑賞教室では取り上げない古典作品の世界へ、工夫を凝らした解説でご案内する入門公演の充実を図る。

日本舞踊・邦楽・雅楽・声明・大衆芸能などのジャンルにおいても、様々な角度から、より楽しめる入門公演を企画、実施し、観客層の拡充に努める。

また、外国人の鑑賞の利便性を向上させるため、音声や字幕による多言語化を一層推進し、さらに、社会人や観光客などの来場しやすい時間帯の設定など、鑑賞機会の増加を図る。

あわせて、国立の劇場として公的式典などの利用にも供する。

(3)舞台芸術の未来を担う多様な人材の育成

国立劇場では開場直後から、伝統芸能の伝承者養成事業を実施し、その後、新国立劇場では現代舞台芸術の実演家の研修事業を行ってきた。

伝統芸能の分野では、研修修了者が現役の歌舞伎俳優の3割以上、歌舞伎音楽竹本演奏者の9割以上、文楽技芸員の5割以上、寄席囃子演奏者の9割以上を占めるなど、養成事業は伝統芸能の伝承において極めて重要な役割を果たしている。

現代舞台芸術の分野では、世界の優れた指導者や次代を担う若手芸術家が集い、高い技術と豊かな芸術性を備えたオペラ歌手・バレエダンサー・俳優等を輩出し、質の高い舞台づくりに貢献している。

新たな国立劇場では、両分野の実演家の養成・研修を行っている強みを最大限に活かすため、伝統芸能の伝承者の養成所と現代舞台芸術の実演家等の研修所を一体的に設置。

両分野共通のカリキュラムなどを通して、講師や研修生が交流し相互に理解を深めることで、広い視野と教養を身につけた舞台人、日本
の文化に根差しつつ世界的にも活躍できる人材を育成する。

また、社会に開かれた施設として、各地の文化施設や学校等と連携し、研修修了者等によるワークショップなどを実施することで、舞台芸術の普及はもとより、養成研修への理解や支援の広がり、そして志望者の増加を図る。

さらに、舞台芸術を支える公演制作者や舞台技術者等の人材養成のため、大学・専門学校等のインターンの受入れ、全国の劇場・音楽堂等の職員を対象とした実地研修等の実施、伝統芸能舞台技術の普及のための仕組みづくりについて検討を進めるなど、国立の劇場としての使命を果たしていく。

(4)伝統芸能の継承・発展を支える調査研究とデジタルアーカイブ化の推進

新たな国立劇場では、主催公演や伝統芸能全般について各種の調査研究と芸能資料の収集、デジタルアーカイブ化を推進し、その成果を公演や演技・演出の向上のために活用するとともに、より多くの人々が快適で便利に利用できるように、伝統芸能の情報発信機能を強化する。