パネルディスカッション「大阪・関西万博視察で感じた映像の可能性と未来」 日本映像機材レンタル協会(JVRA)業務担当責任者会議

〇NTT パビリオン
但木 万博記念公園内に特設のステージを作り、4月2日にPerfumeのパフォーマンスを収録。そのパフォーマンスを現在のNTT パビリオンでリアルタイムに視聴するというイベントがありました。NTT パビリオンのメインとなる体験は、このパフォーマンスを追体験するといったものです。
3D メガネをかけて立体かつ高精細なPerfume の映像を見ながら、床に埋め込まれた128個の震動子によって、Perfume のダンスの動きに合わせて振動を感じられます。
映像の収録時にはステージにセンサーカメラ数台を設置し、Perfumeも加速度センサーを付けて踊っているらしいです。センサーで位置トラッキングをし、3D の点群情報として伝送、超低遅延で振動が伝わるそうです。映像と振動が完全にリンクしており、とても臨場感があります。
NTT 社のIWON 構想によると、IWON は2030年に普及予定だそうです。データの転送量は従来の125倍だとか。現在の5G が20GBですから、1秒1,000TB が伝送できるようになる。世間ではもちろんのこと、映像業界にとっても夢のある話ですね。


〇パナソニックグループ パビリオン「ノモの国」

写真⑦

木村 入場後すぐに小さい部屋に30人くらいで入りました。一度真っ暗になるのですが、来場者を世界観に没入させる手法だと思います。真っ暗になると空間に対する私たちの認識がリセットされ、自分がどこにいるのか、建物の大きさも曖昧になりますよね。そこから映像や音を使うと、別世界に連れていかれるような感覚を与えやすい。メインの空間ではRFID ※2が内蔵された石のようなものを持って、特定のマークをタッチしながら空間を歩きます。(写真⑦)

写真⑧

うちわであおぐと映像の蝶が飛んでいく演出もありました。中に風を感知するセンサーが入っていて反応するのかな。
また上部には円錐状にミストを吹き付ける装置があり、このミストに映像を投影し、かなり立体的な像を作り出していました。よく見るミストスクリーンには平面的に映像を映しているパターンが多かったので、円錐状のミストに立体の映像を映す手法は、活用が広がっていくのではないでしょうか。(写真⑧)

※2…RFID 電波を用いて専用タグ(RF タグ/IC タグ)の情報を非接触で読み書きする技術


TECH WORLD
木村 ここは台湾の最新テクノロジーを紹介する民間パビリオンです。驚いたのは台湾杉をモチーフにした展示。巨大な木にマッピングをし、小さなモニターが560台設置されていました。モニターも制御している機構も台湾製らしく、映像屋として見ていてゾクゾクする演出でした。(写真⑨)

写真⑨

まとめ
占部 全体を通して感じた傾向はどのような点でしょうか?

但木 紹介した国々をはじめどの館も、鏡また振動を使った演出が多いと感じました。全体を通して没入感を重視していた印象です。

木村 16:9のスタンダートな四角いディスプレイは少なかったですね。どれも円だったり湾曲したり。

占部 私はウォータースクリーンやミストが効果的に使われていたと思いました。プロペラも改めて活用が出てきましたね。没入感の演出については但木さんのおっしゃった手法に加え、センシング技術やAI の取り込み方が多様でした。ハプティクス、視覚、聴覚、振動、嗅覚を複数使うことに多くの館が取り組んでいました。
2、3年前から生まれていた技術が、より一層洗練されてきたように感じます。木村さんのレポートには「空間に点を表現する」というちょっと難しいワードも出ていましたが。

木村 映像にZ 軸(奥行き)が加わって、3D 映像として表現できるようになれば、3D で撮影したものが3D のまま見せられる。このこと改めて実感し、映像の未来を感じました。例えばドローンショーや立体に吹き付けたミストを使った演出が先進的な例でしょうか。

占部 映像だけでなく五感を使った立体的な演出と表現、これらを作り出す技術が求められていくでしょうね。

但木 その分データ量が増えるので、伝送技術も必要になるということですね。

占部 一般のお客さんがさまざまなパビリオンを楽しんでいる姿を見ながら、映像の未来を体感するというより、映像が進化していく方向性について理解せざるを得ない2日間でした。ありがとうございました。