2026年4月28日、観光庁および日本政府観光局(JNTO)は、2026年度から2030年度を対象とする新たな「訪日マーケティング戦略」を発表しました。持続可能な観光の推進とインバウンド市場のさらなる多様化を見据えた本戦略は、「市場別戦略」「市場横断戦略」、そして「MICE戦略」の3部構成となっています。
本記事では、とくに経済効果が高く、地方創生への波及効果も期待される「MICE(国際会議・インセンティブ旅行等のビジネスイベント)戦略」にフォーカスし、その具体的な目標や取組方針について詳しく解説します。
1. 新たなMICE戦略が目指すもの:地方誘致の強化と3つの柱
今回の戦略策定の背景には、インバウンドの回復から「質の向上」と「地方への誘客」へシフトする政府の狙いがあります。MICEは一般の観光客に比べて消費額が大きく、ビジネス創出や都市のブランド力向上に直結します。
新戦略では、これまで大都市圏に偏りがちだったMICEの開催を地方部へも広げるべく、「地方部へのMICE誘致活動の強化」を最重要課題の一つに掲げました。これを実現するために、以下の3分野において、認知度向上から開催に至る各フェーズでのアクションプランを明確化しています。
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国際会議(Convention)
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インセンティブ旅行(報奨・研修旅行:Incentive)
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MICE基盤整備
2. 国際会議における野心的な目標設定
日本のMICE戦略を牽引する国際会議分野において、JNTOは以下のような高く明確な目標を掲げています。
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2030年までの長期目標:アジアNo.1の国際会議開催国として不動の地位を確立し、世界ランキングで5位以内に入る。
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短期・中期目標:アジア主要5カ国における国際会議の開催件数シェアの3割以上を確保し、アジア最大の開催国の地位を奪還する。
3. 戦略的なターゲティングと注力分野
無作為な誘致ではなく、データに基づいた戦略的なアプローチが明記されました。
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ターゲットとなる会議:ICCA(国際会議協会)の厳しい基準を満たす権威ある国際会議。
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注力する学術・産業分野:ICCAのデータ上で参加人数や開催件数が拡大傾向にある分野や、日本国内において科学研究費助成事業(科研費)が拡大している学術分野に照準を合わせ、日本の強み(研究力や産業力)を活かした誘致を行います。
4. 目標達成に向けた6つの基本方針
目標達成に向けて、国内外のキーパーソン(ステークホルダー)を巻き込むための「6つの基本方針」が打ち出されています。
【海外向けアプローチ】
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グローバルな意思決定者への直接的プロモーション:IAPCO(国際PCO協会)に加盟する影響力の強い「コアPCO(国際会議運営会社)」や、海外の学協会国際本部に対するアプローチを強化し、開催地としての日本の魅力を直接訴求します。
【国内向けアプローチ】
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開催意欲の喚起:将来的に国際会議の主催者(キーパーソン)となり得る大学、研究機関、国内の学協会・団体の研究者等との連携を深め、日本への招致活動を後押しします。
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専門人材の育成とサステナビリティ対応:国内のMICE関係者(自治体、コンベンションビューロー等)に向けた人材育成を行うとともに、現在グローバルスタンダードとして強く求められている「サステナビリティ(持続可能性)」など、新たなMICEニーズに対応できる受け入れ態勢を構築します。
【国内外共通のアプローチ】
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都市の魅力創出と差別化:競合他国に打ち勝つため、その地域ならではの歴史・文化・産業を活かした「都市の魅力創出」を支援し、積極的な情報発信を行います。
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オールジャパン体制での支援:政府、自治体、民間企業、学術機関が一体となり、誘致から開催支援に至るまでシームレスなサポートを提供します。
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大阪・関西万博等のメガイベントの活用:国際的な注目が集まる大型イベントを絶好の契機と捉え、それに連動した国際会議の誘致・開催を積極的に進めます。
2026年版「訪日マーケティング戦略」におけるMICE戦略は、単なる参加者数の増加を追うだけでなく、「日本の知的・産業的優位性の発信」「持続可能性への配慮」「地方経済への波及」という質的向上を強く意識した内容となっています。
海外の有力なPCOとの連携強化と、国内の研究者・学協会への手厚いサポートを「車の両輪」として機能させ、オールジャパン体制で誘致に挑む姿勢が鮮明に打ち出されました。世界トップ5、そしてアジアNo.1の確固たる地位の確立に向け、日本のMICE産業は大きな転換と飛躍のフェーズに入ったと言えます。














