ホーム トピックス 特集 【JNTOインタビュー】世界第5位の国際会議開催国に向け、さらなる飛躍を

【JNTOインタビュー】世界第5位の国際会議開催国に向け、さらなる飛躍を

国際会議協会(ICCA)が発表した、2025年に全世界で開催された国際会議の統計で、日本は世界の国際会議件数で順位を1つ上げ世界第6位となった。日本は第5次観光立国推進基本計画で、「アジア最上位、世界5位以内」を目標に掲げている。日本が世界第6位となった要因と、目標達成に向けた今後の展望について、日本政府観光局(JNTO)MICEプロモーション部長の巽氏に話をうかがった。

巽 麻里子 氏
安心・安全が日本の大きな魅力
ますます高まる世界からの注目

ーーICCA国際会議統計で日本の国際会議開催件数はワンランクアップし、世界第6位になりました。今のお気持ちをお聞かせください

国際会議の開催件数は米国が第1位、2位から6位までを欧州諸国が占めるという状況が長く続いていました。今回、日本が欧州5カ国の中に切り込んでいく形となり、感慨深い気持ちです。国際会議の誘致活動は開催数年前から始まっています。2025年の統計でこのような素晴らしい結果を出すことができたのは、今まで尽力してきた関係者の並々ならぬ努力のたまものだと言えるでしょう。

ーーランクアップの要因をどのように見ますか

日本の大きな強みは、安全・安心な環境です。昨今は地政学リスクという言葉を聞く機会も増えましたが、日本は世界から安心して訪れることのできる国と評価されています。観光地としても人気で、たくさんの人に「日本に行ってみたい」と思っていただけることが、国際会議開催国としての地位を高めているのだと感じます。各地のコンベンションビューローも、一生懸命に国際会議開催の実態把握に努めてくださりました。

ーーコロナ禍以降、リアルとオンライン参加を併せたハイブリット形式が登場しましたが、今は現地に参加する意義が見直されているように感じます

最近ではハイブリッド形式から完全リアル形式に回帰する傾向が見られます。日中の国際会議だけでなく、夜のネットワーキングやエクスカーションでの交流が、新しい共同研究やビジネスを生むきっかけにもなるため、オンラインで代替しきれない価値があります。

国際会議の参加者が現地を訪れる意義は、観光面でも大きいです。多くの人が会期中に滞在することで、開催地の宿泊業や飲食業等が活性化します。会期前後に休暇を取って周辺地域を旅行したり、会議参加者の家族が観光を楽しむといったケースも多く、経済効果や都市のブランディングにも寄与します。国際会議の主催者からも、会議参加者からお勧めの観光地を聞かれることが多いという話をよく耳にします。

ーー国際会議の開催は地域にとって大きなチャンスとなります

国際会議は主催者が開催地を決めますので、海外ではそこまで知名度の高くない都市にもチャンスがあります。国際会議がきっかけで日本の都市の魅力に触れ、次からはプライベートで訪日観光に訪れるということもあるでしょう。

このようなメリットがあるため、町ぐるみとなって国際会議をサポートする都市もあり、市民向けプログラムを実施したり、ボランティアを募って市民が国際会議に触れる機会を増やしたりといった取組みが増えてきています。

ーー2025年には世界から注目を集めた大阪・関西万博が開催されました

大阪・関西万博は世界中の人に日本を深く知っていただく機会となった、素晴らしいイベントでした。万博が終わってからもレガシーが継承されており、その成果や効果が実を結ぶのが今から楽しみです。

アジア地域が一体となって連携し
欧米諸国と競うことが求められる

ーー世界から見た、国際会議開催国としての日本の立ち位置についてどのようにお考えですか

開催件数で2位から6位を占めている要因の1つに、欧州には欧州地域をローテーションする会議が非常に多いことが挙げられます。アジア地域をローテーションする会議と母数を比較した場合、その差は歴然です。日本が今後、国際会議開催国としての存在感をさらに高めるためには、アジア太平洋の地域をローテーションする会議総数を増やす必要があります。日本にとって競合である韓国やシンガポール、香港などの国・地域と、この点においては連携を強化していくことが求められるでしょう。

また、別の視点として、国際会議の件数を分野別で見ると、日本はテクノロジー分野の国・地域別ランキングで世界第2位と強く、サイエンス関連も第3位で上位にランクインしています。得意分野をさらに伸ばすことが、国際会議開催国としての日本の成長にもつながります。

ーー目標の世界第5位を実現するためには、何が必要でしょうか

国際会議は主催者がいて初めて成り立ちますので、主催者が抱えている課題をきちんと理解し、然るべき支援を行っていく必要があります。また、国際会議の重要性や意義、開催地にもたらすメリットなどを社会にしっかり理解していただくことも重要で、JNTOでは国際会議開催に係る啓蒙活動にも力を入れています。また、国際会議のノウハウがなく開催が困難という主催者に向けには、ノウハウの提供やベストプラクティスの共有を行うことで、「自分たちにもできる」と感じていただけるように努めています。

JNTOでは国内外で影響を発揮するリーダーに「MICEアンバサダー」となっていただき、国際会議誘致・開催のノウハウを共有していただく制度を設けています。毎年開催している国際会議誘致・開催貢献賞の表彰式では、国際会議の誘致・開催にあたってどのような取組みや工夫をしたかに焦点を当て、広く情報発信をしています。

ーーMICEには地方誘客の効果もあり、地域活性化の起爆剤となる可能性を秘めています

昨年度、貢献賞を受賞した長崎で開催された保健関係の会議「第8回保健システム研究グローバルシンポジウム」では、表彰後に関係者が再度集まり、それぞれの取組みを振り返り共有する場が設けられました。中には主催者も知らなかった関係者の苦労なども共有され、話し合いを経てよりチーム力が高まり、今後他の会議にも連携して取組む契機になったようです。

この事例のように経験を点ではなく面でつなぐことができれば、次回以降のMICE開催におけるクオリティアップも期待できますし、MICE開催都市としてのブランディングにもつながっていくことでしょう。

IAPCOとの連携協定をもとに
日本の存在感を強力にアピール

ーー昨今の国際会議の特徴やトレンドについて教えてください

よく聞くのが、次世代育成に力を注いでいるということです。多くの主催者は自分たちの研究分野を若い世代にも継承してほしいと考えていて、さまざまな取組みを行っています。ボランティアに学生参加枠を設けたり、ポスターセッションで学生に発表の機会を与えたりすることで、国際会議に触れる機会を増やすとともに、次世代の興味・関心を喚起しているのです。

特に昨今は円安で、若手が海外に渡航し国際会議に参加する機会は限られますが、国際会議を国内で開催することで、若手や学生にも参加してもらいやすくなります。また、地元企業が参加しやすいようなプログラムが組まれることも多いようです。

ーーJNTOでは今後、国際会議の誘致に向けてどのような活動を行っていきますか

まずは国際会議開催国としての日本の認知度向上を目指し、海外の関係者に働きかけるとともに、積極的な情報発信を行っていきます。JNTOのウェブサイトではケーススタディを掲載しており、実際に日本で開催された国際会議の様子を動画で見ることも可能です。短い動画ですが主催者へのインタビューもあり、日本の魅力がギュッと詰まった構成になっています。最近ではSNSを活用した情報発信にも注力していて、LinkedInのフォロワー数はここ2年で4万3000まで急増しました。

また、JNTOは国際会議を運営するPCOで形成される国際団体IAPCOとデスティネーション・パートナーシップ協定を結んでおり、日本のプレゼンスを高める活動を行っています。国際会議には学術団体などの先生が立候補して誘致を行う従来型のほか、国際本部が主体となって開催地を決める国際本部主導型があり、最近は後者のパターンも少なくありません。国際団体本部と契約しておりIAPCOに加盟しているコアPCOに開催地選定をアウトソーシングすることもあるため、IAPCOとの連携を通じて日本の存在感を高める意義は非常に大きいと言えるでしょう。

ーー今回のランクアップで、日本への注目度はさらに高まることでしょう

「日本なら何かあっても大丈夫」と言っていただける信頼感は何にも勝る日本の魅力です。それを醸成していくことが今後のステップアップにつながっていくため、今後も日本が魅力的な国際会議開催国であるということを、世界に強く周知してまいります。

 

※本記事は新聞「見本市展示会通信」(2026年7月15日号)に掲載された記事を編集したものです。