世界中から100万人が訪れる「バーチャルマーケット」の魅力とは

テクノロジーの発展にともない、企業の活動フィールドはリアル世界にとどまらず、バーチャル世界にまで広がりを見せている。その中でもとりわけ大規模なイベントとして注目を集めているのがHIKKYの主催する「バーチャルマーケット」だ。その魅力について、同社でPRチーフを務める大河原あゆみ氏に話を聞いた。(インタビュー=2021年9月10日)

大河原あゆみ氏

 

2つのギネス世界記録を樹立
現実と同様の買物を楽しめる

 

―HIKKYの事業と、開催しているオンラインイベントについて教えてください
XR領域における大型イベントの企画・制作・宣伝や、パートナー企業との新規事業開発を手掛けています。主催する「バーチャルマーケット」は世界中から100万人以上が来場する世界最大のVRイベントで、「バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数」と「1時間でTwitterに投稿されたアバターの写真の最多数」という2つのギネス世界記録を樹立しました。

「バーチャルマーケット」会場エントランス

―バーチャルマーケットとはどのようなイベントなのでしょう
2018年8月から始まったイベントで、さまざまな企業や個人クリエイターが出展していて、現実世界と同様に買い物を楽しむことができます。初開催時は77サークルが出展するイベントでしたが、回を重ねるごとに規模を拡大し、2020年12月に開催した「バーチャルマーケット5」では約1,100のサークルと73の企業が出展しました。

―どのような物が買えるのでしょう
VR空間で使えるアバターなどのアイテムのほか、出展企業から現実の商品を購入することも可能です。例えば大丸松坂屋百貨店のブースでは飛び出すお中元カタログが展示してあり、美味しそうと思ったらそこから企業のECサイトに飛んで購入することができました。料理の3Dモデルを購入することも可能で、VR空間内で飲み会などのイベントを盛り上げてくれるアイテムとして高い人気を誇っています。

大丸松坂屋百貨店ブース
大丸松坂屋百貨店ブース2
大丸松坂屋百貨店ブース3

 

新規市場として企業が注目
さまざまな分野から出展が

 

―バーチャルマーケットのどのようなところが企業の注目を集めたのでしょう
世界中から100万人以上の人が訪れるほか、通常の営業ではなかなかリーチできない層にアプローチできるのが持ち味だと感じています。大丸松坂屋百貨店の場合、バーチャルマーケットへ出展することで、これまでなかなか接点を持ちづらかった20代~30代の男性にステーキなど高額商品をPRすることができました。
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着してバーチャルマーケットを満喫するような人は生活水準も高い傾向にあり、企業にとっては魅力的な潜在顧客と言えます。

―バーチャルマーケットは見た目の華やかさも印象的です
企業が単独でVR空間を作ろうと思うと、コスト面などからどうしても簡素なものになりがちです。その点、バーチャルマーケットは街を彩るさまざまな装飾や演出で溢れかえっているので、凝ったブースを作らなくても華やかに見えます。空中に浮かぶ金魚や、近づくと自動的に割れる風船など、現実ではなかなか再現が難しいギミックも用意してあります。
ブース内で自分のアバターを撮影してSNSに投稿する方も多く、バズ効果が期待できるのも特徴の1つです。

―どのような企業が出展していますか
今年8月に開催した「バーチャルマーケット6」では、HIKKYと業務提携しているJR東日本がリアルの駅を忠実に再現した「バーチャル秋葉原駅」を出展して注目を集めました。初出展のヤマハ発動機がバイクのVRシェアライドサービスを行ったことも話題になりました。
ほかにも、NTTdocomo、BEAMS等のファッションブランド、ゲームメーカーやエンタメ企業など、さまざまな分野からご出展をいただいています。

バーチャル秋葉原駅1
バーチャル秋葉原駅2
BEAMSブース1
BEAMSブース2

 

SDGsや働き方改革にも貢献
広がり続けるVRの可能性

 

―今年8月からはVRコンテンツ開発エンジン「Vket Cloud」の提供も開始しました
Vket CloudはWEBブラウザ上で動作するVR空間を作ることができるエンジンで、専用アプリをダウンロードしなくても、URLをクリックするだけでVR空間にアクセスできます。既存のブラウザ型エンジンに比べ、描画パフォーマンスに優れている点も特徴です。

―VR空間に対する企業の注目度は高まっていると感じますか
リアルでは店舗を構えたり、展示会に出展したりするためには工事が必要です。改修工事や、撤去作業もしなくてはなりません。VRであれば作ったデータはいつまでも綺麗なまま保存しておくことができ、再利用も可能です。昨今ではSDGsの観点から廃材を減らす取組みも進んでおり、VR空間への注目度の高さを感じています。
また、VR空間では誰もが自由に働くことができます。以前、九州に住む病気の女の子が病室からVR空間にアクセスし、ファッションブランドWEGOの店員を務めたことが話題となりました。これは企業の働き方改革や、多様性といった課題にも通じるものがあります。

―企業と今後、どのように向き合っていきますか
VR空間でできることは日を追うごとに増えています。企業にもDX化が求められる時代ですので、VRで社会を便利にすることに挑んでいただけると嬉しいです。
HIKKYでは今年の12月に「バーチャルマーケット2021」を開催します。また、バーチャルマーケットのほかにも各ジャンルに特化した「ComicVket」「MusicVket」「GameVket」も毎年開催しておりますし、Jリーグやプロ野球などのスポーツ団体やバーチャルボートショー、バーチャル音楽イベントなどさまざまなVRイベントの実績があります。「こんなことをやってみたい」とご相談いただければ、さまざまなご提案が可能です。

「バーチャルマーケット6」エントランス
「バーチャルマーケット6」出展企業一覧