寄稿 展示会産業はコロナ禍から何を学ぶべきか? 寺澤 義親 氏

3⃣ 新たなキャンペーンを開始する

1)米国:新たに2つのキャンペーンを立ち上げた
コロナで長い間ビジネスイベントやライブイベントを開催できずに地域からイベントが消え多くの人が仕事を失うことになった。深刻な状況に直面した業界ではこれまでもビジネスイベントについては例えば2011年からマーケティング手段としてのリアルミーティングの重要性と業界結束を強化するためにExhibitions Mean Businessキャンペーンを開始した。2016年からはGlobal Exhibitions DayにGlobal Meetings Industry Dayなどの世界規模のキャンペーンを展開しているがコロナ禍を契機に新たに2つの業界横断のキャンペーンを立ち上げた。
一つは2020年4月に地元自治体、州政府、連邦政府に対してコロナ禍からの回復に必要な財政支援を求めることを目的に立ち上がったGo Live Togetherである。もう一つは2021年2月に米国のビジネスイベント業界の持続的な発展を目的に政策決定者に対してビジネスイベントが持つ経済発展、雇用、中小企業支援への重要な役割を理解してもらい業界の地位を向上させる長期的な戦略として立ち上げたExhibitions and Conferences Alliance(ECA)である。
前者はFreemanが呼びかけIAEE(国際展示会イベント協会)を始め米国など世界113か国でビジネスをする4,000社を代表する80人の創設メンバーが立ち上げた。このキャンペーンのサイトでは連日のように地元選出の連邦議員に業界支援の陳情を呼び掛ける投稿を見ることが多かった。後者はIAEE,CEIR,Destinations International, SISO, Exhibit Designers+Producers Association,Exhibition Services&Contractors Associations, International Association of Venue Managers,Trade Show Labor Alliance,UFIの9団体で構成され労働組合も参加している。既存のキャンペーンExhibitions Mean BusinessとGo Live TogetherもECA傘下で継続されることになっている。
こうした新たなキャンペーンについて米国主催企業トップのEmerald ExpositionsEventsのMr.Herve Sedky(President&CEO)はTrade Show Executiveの取材でコロナからの回復と今後の発展への戦略を問われた際に次の通り語っている。
「コロナ禍で我々の産業はかつてない落ち込みと同時に厳しい経験をすることになった。それは我々の展示会産業が持つ地元や州さらに国全体に及ぼす経済効果についてはほとんど知られていないことだった。そのため業界は結束して展示会産業が持つ重要な役割についての教育やその理解を深める活動を実施してきた。会社としてもGo Live Togetherキャンペーンに強くコミットしていく。ビジネスが回復するためには展示会が基盤となる。こうしたメッセージを強く発信して業界再建と更なる発展につなげたい」

その後ECAは連邦議会への集中的ロビーイング活動として2022年6月6日から10日にバーチャルイベントECA Legislative Action Weekを開催すると4月6日に発表している。これはコロナ禍で悪化した経済と雇用の回復に展示会と会議が重要な役割を果たすことについて議員にアピールすることを目的にしている。今回は小規模事業者への財政支援、イベントキャンセル保険のカバー範囲、世界各地の米国大使館・領事館でのビザ発給回復について議員と業界リーダーにインタビューを実施すると同時に7日~10日は議員とのバーチャルミーティングを予定している。さらにECAは4月7日には支持する法案Relief for Restaurants and other Hard Hit Small Businesses Act of 2022が下院で可決されたことを発表。この法案は130億米ドルの予算でコロナ禍で深刻な影響を受けたビジネスイベント産業を含めすべての業種をカバーして小規模事業者に給付金を提供するものである。これまでのレストランや閉鎖施設運営者への支援プログラムにはビジネスイベント企業は申請資格がなかったので今回の法案が下院で可決されたことはビジネスイベントが全米で回復するうえでも重要だと評価されている。ECAの議長でEmerald Expositions Events代表のMr.Herve Sedkyは「我々の業界が回復する時に要となる小規模事業者に必要なライフラインを提供するこの法案は極めて重要である。ビジネスイベント企業の99%以上が、さらに全米各地からの出展者の80%が小規模事業者でまさに彼等こそがビジネスイベントの機関車役になっている。我々は上院にもこの法案を可決するように求めていく」とコメント。

2)英国
ビジネスイベント業界団体は結束を強化して政府に対する支援要請とロビーイング活動を継続したがビジネスイベントについてもっと多くの人に理解してもらうことが業界の再建と発展に重要だとしてキャンペーンOne Industry,One Voiceが始まった。これは2020年5月に業界有志が呼びかけイベント業界の横断的組織であるBVEPが強く支持する形で開始されたが、ビジネスイベント業界が英国全土をカバーするかつてない初めての広報キャンペーンとして一般市民とメデイア向けに取組まれた。
そこでは英国のイベント産業は世界のリーダーにもなっていること、イベントを安全に開催する対策についても英国はトップクラスであることをアピールした。キャンペーンにはイベント関連の団体、主催者、施設、サービスサプライヤー、代理店、関係企業、フリーランスなど多くが参加して、キャンペーン開始後の3か月で100社以上が協賛したと報告されている。