「集客」から展示会のブース作りを語る 特別座談会

―人が集まるブースを実現するためには何が必要でしょうか。また、そのためにどのような提案をしていますか
西田 少し前まで日本の展示会のブースというと、非常にシンプルでいかにも〝仕事のために作りました感〞が出ていました。けど、面白みがあるブースとそうでないブースなら、前者に足を運びたくなりますよね。例えばラウンジやカフェのような、日常の延長線上をかたどったブースなら来場者も入りやすいでしょう。で、気楽に入ってみたらハイクオリティの映像が流れていたりしたらインパクトは抜群です。ディスプレイも同様で、雑貨と一緒に置いてみるなど、来場者の目を楽しませる工夫を凝らした方が記憶に残ります。

―面白みのあるブースを作ろうという提案ですが、BtoBの展示会でも出展者の理解を得られるものでしょうか
西田 BtoBの展示会でも、出展者は人間なのできちんと筋道を立てて話せば理解していただけます。全体のバランスは取るので、面白いブースを作りましょうと。

坂本 私もBtoBの展示会に対して硬い印象を持っていましたが、2014年6月にモスクワで開催された世界石油会議の併設展示会の仕事をしてイメージが変わりました。世界の環境やエネルギーを真剣に話し合う場で、世界的に名だたる大企業が出展しているにもかかわらず、そこにはお祭りのような楽しさがあったんです。われわれが作るコンテンツはアイキャッチが多いですが、足を運んでいただいた人を楽しませるエンタメ要素は絶対に必要で、それを足掛かりに出展者と来場者がコミュニケーションを図っていただければと。直接商談につながらなくても、コミュニケーションの積み重ねが後のビジネスにつながることはいくらでもありますので。

蜂谷 賑わいの演出を考えるとき、いかに異彩を放って「あれはなんだろう」と心をつかむ趣向というのは必ず求められます。特に日本のブースは先ほどの話にもあった通り、ビジネス然としているというか、似たようなブースが乱立していますから。目を止めてもらうことを第一に考えるならば、とにかく映像の大きさで勝負することも有効かもしれません。ただ、せっかく中に入ってもらってもパネルが1枚飾ってあるだけだとすぐに帰ってしまいますので、飽きさせない工夫や、小さくてもいいので連続した驚きがあるといいですね。一番大切なのは出展者と来場者に話題を提供することです。

―顧客とのやり取りの中で、デザイン面以外で提案することはありますか
蜂谷 事前の集客や事後のフォロー、それからウェブ関連の提案はすることがあります。展示会ではスタッフの力が大きなウェイトを占めますので、素晴らしいデザインとプロダクトだけでは不十分なケースも多いです。なので、どのようなタイプの運営ディレクターやスタッフがいて、どうやってその人たちと成功に向けて協力できるのかを探っていきます。

―逆に出展者から出たアイデアで、これは良かったと思ったものがあればお聞かせください
蜂谷 製品の特徴や良さを前面に押し出すアイデアは、製品を熟知している顧客側ならではのものです。そういったアイデアがどんどん出るよう、打ち合わせの場では顧客を刺激するアイデアをこっちも提案しなくてはなりません。そのため医療系の会社との仕事では、事前に講演会に参加して製品の使い方や触れたときの感触を確かめてみたりもします。

西田 私は蜂谷さんと逆のスタンスで、あえて何もせず客観視することが多いです。

坂本 立羽氏

坂本 私の場合は製品模型や説明を映像内に入れるケースが多いので、結構調べますね。調べたことを私たちの言語としてどう変換するか、難しいことをどう面白くするか。そのまま見せても仕方がないので、どうイメージ化するかが問われます。

 

―表現手法の面ではいかがでしょう。感じている変化、トレンドなどがあれば教えてください
西田 変化というと、展示台の作り方が変わってきています。昔はただの箱型だったんですが、最近ではブランコの上に展示製品を置いていたり、企業によって来場者の目を引くための工夫が見られます。製品との関連性も大事で、アウトドアであればキャンピング風の展示台を設置するなど、見ていて非常に興味深いです。

蜂谷 昔と比べて、世界のさまざまな光景を目にする機会が増えましたので、来場者の目も日に日に肥えていっています。そして常に頭の片隅には「まだ見たことがないものを見てみたい」という欲求があるため、真新しさのない展示台は意識の外に追いやられてしまうのです。安直にグラフィックや説明パネルをLEDで光らせても効果的でないのはそういうことかと。

坂本 後は、一時期に比べて圧倒的に文字が減りました。よく使われるのはタイポグラフィティ的な使い方が多いです。

―皆さんがこれから取り入れていきたい、試してみたい手法や演出はどのようなものですか
西田 日本でも海外でも、新しい手法はあまり増えていない気がします。近年よく見かけるのは透明のディスプレイで、透明のフィルターと別のフィルターを重ね合わせるパターンです。けど、その手法が本当に効果的なものかどうかは正直分かりかねます。最新の手法を追い求めるよりも、〝空間と映像の融合〞など全体のブランディングに注力すべきかもしれません。

坂本 ひとつやってみたい路線がありまして、説明員のプレゼンテーションスタイルを格好良く見せるというものです。ぱっと見は普通のサラリーマンなのに、手の中からマジックのような光景が次々に飛び出したら見てる方は驚きますよね。ブースに入ってから出るまでの数分間がミラクル体験であれば、滞在時間以上のものを感じていただけるのではないかと。

蜂谷 最近はホログラムを用いるケースが増えていると感じますが、新しい手法を追い求めるより、今ある技術をいかに組み合わせて来場者を魅せるのかが大事ではないでしょうか。技術はあくまで製品やサービスをアピールするためのものなので、それ自体のすごさを前面に押し出すのは場違いな気がします。

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