海外のMICE誘致事例や組織体制から学ぶ「横浜グローバルMICEフォーラム」レポート

地域や会場はMICEの誘致のためにさまざまな取り組みを企画し、開催地としての魅力をアピールする。

魅力向上に精力的に取り組むパシフィコ横浜は、2月に自主企画「第1回 横浜グローバルMICEフォーラム」を開催した。海外のMICE誘致成功事例をはじめとする最新情報の共有やMICE業界関係者間での交流を図るべく、フォーラムはプレツアー、ビジネスランチ、横浜グローバルMICEフォーラム、社交プログラム、ナイトプログラムで構成され、さらに翌日はパシフィコ横浜で開催するMICEを想定し、県内のスポットを巡るポスト・ツアー「新発見!小田原・箱根ツアー」を実施した。

利用者への付加価値を提供するため、貸館にとどまらない商材開発の視点から企画されたこの取り組み。メインプログラムである「横浜グローバルMICEフォーラム」と「新発見!小田原・箱根ツアー」の模様をレポートする。(見本市展示会通信2020年3月15日号掲載)

横浜グローバルMICEフォーラム

馬鳥 誠氏

「MICEにおける〝地域連携〟のその先へ」と題した横浜グローバルMICEフォーラムでは、はじめにパシフィコ横浜の馬鳥誠取締役営業推進部長があいさつし、4月に19年ぶりとなる新施設・パシフィコ横浜ノースが開業することに触れながら「ノースの開業によってMICE産業の発展に寄与したい。そのためには連携が必要で、連携のために海外から学ぶ場とした。このフォーラムで学んだことをヒントにして活用してほしい」と企画趣旨を説明した。

フォーラムではメインプログラムとして国際会議業界の国際組織であるInternational Congress and Convention Association(ICCA)の理事を務めるジェイソン・イェー氏(GIS グループCEO)や、ペナン・コンベンション&エキシビション・ビューロー(PCEB)CEOのアシュウィン・グナセケラン氏によるキーノートスピーチが行われたほか、ICCAアジア・パシフィック事務局長のノーア・アーマド・ハミド氏によるレクチャー講演が実施された。3名のスピーチを以下にまとめる。

国際会議のための国際会議「ICCA総会」の誘致に成功した台湾・高雄市の取り組み

ICCA高雄総会2020に向けた取り組み~会議誘致における台湾の戦略

ジェイソン・イェー 氏

台湾政府のMICEについて

ジェイソン・イェー 氏

政府の取り組みは台湾の観光戦略の一つとしてMICE誘致戦略がスタートしたことから始まる。当時、観光局がMICEに対応できないとしたことから、台湾では経済部がMICEを所管することになっている。

ICCA総会誘致  

ICCA総会誘致では〝都市の魅力を訴求する〟という戦略をとっていない。重工業や造船の町という特徴を持ちながら、若年層の人口減少といった課題を抱える高雄市が〝ICCA総会の開催によって発展につながる〟という観点からプロモーションした。インフラなどからみても、当時は都市の魅力では戦えないことは感じており、誘致合戦に挑むために戦略を考えて、高雄が変革する手段としてICCA総会を利用しようとした。テーマをTransformation/Young Energy/Openness/Diversityに定めた。Young Energyは関心や興味を持つことで年齢は関係なくなるという考えを、Diversityは台湾がアジアで初めて同性婚を認めていていることやジェンダーだけでなく文化・自然についても異なるものを尊重する風土を表している。ビットプレゼンテーションは学生に行ってもらった。政府がMICE戦略を構築したことから大学でもイベントに関するコースを作っていたし、会議運営は座学だけで教えることは難しく、ワークショップのような体験型のプロジェクトにしたかったことからこのような形になった

体験提供と地域連携

“体験”の重要性については、MICEの満足度のハードルが上がっており、スピーカーの質だけでは満足してもらえないようになっていることを実感している。イベント事例を挙げると「アジア弁理士協会会合(APAA)」では期待に応えるために、ビジネスコミュニケーションの場を積極的に作り、参加者にリターンが得られるようなプログラムにして、併せて実施したツアーでは“学び”の要素を入れた。近年は報奨旅行以外のMICEでも報奨旅行のようなプログラムを求められることが多い。学びに加え、伝統の要素も人気だ。

良い体験を提供するためには広い視野を持って考える必要がある。PCO(会議運営会社)と会場とイベントサポート企業のような従来のエコシステムだけでなく、政府や大学との協力関係が必要だ。そして政府の協力を得るには地域社会を巻き込むことが重要で、MICEを地域社会に理解してもらうことで、“市民の声”として政府に訴えることができる。

大きく地域社会が関与した例として2017年のECO Mobilityを挙げたい。この時もECO Mobilityの誘致で高雄に新しいレガシーを作りたいと考え、会期中の1カ月間、市内で低炭素の乗り物を推奨、販売を行う取り組みを進めたかった。すでに多くの人がバイクを所有しているなか、市民への理解を得るために何をすべきか。我々が行ったことは地域の学生への教育だ。子どもから親世代を説得してもらうという流れにした。

重要なパートナーシップ

産学官の連携はやはり重要だ。政府のサポートがつくことで信頼を得ることができ、大学との連携は若い世代に参入してもらうことができる。MICEを観光業と同じイメージで考える人もいるが、観光よりももっと経済や知識につながるということを教育していく必要がある。そして社会や政府がMICEのメリットを実感するためには、地域社会に関わってもらい、政府に市民とともに大きな声を届けることが大事といえる。

次ページ:設立数年でICCAアジアパシフィックサミットの誘致に成功したペナンコンベンションビューローの組織づくりと誘致戦略とは?