2021年の新提案<見本市展示会通信・特集>

2020年は、新型コロナの影響で新たなビジネスモデル創出について知恵を絞る年になった。その結果、事業領域の拡大や他分野への挑戦が活発に行われ、それぞれがアフターコロナへ向けた準備を着々と進めている。本特集では、各企業のコロナ禍における突破口になり得る戦略や次善の策を探る。

「見本市展示会通信」春季特集号(2021年4月15日発行)掲載記事


1:<インタビュー>展示会におけるデジタル活用の実際

展示会などのプロモーション支援を手掛けるビヨンドが、マーケティングオートメーション(MA)サービス「B―SIS(ビーシス)」を展開し、利用者を伸ばしている。コロナ禍で展示会におけるデジタル活用へのニーズが高まったが、過渡期ゆえに適切な活用方法が不明瞭な現状もある。そのような中でも実績を上げ、「今やデジタルやオンラインが使えないという先入観は捨てても良い」と話す吉澤史朗社長にデジタル活用の実際と深く携わる中で見えてきた方向性について聞いた。

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机の中で眠った名刺
持ち腐れくい止める

吉澤史朗社長
吉澤史朗社長

―B―SIS(ビーシス)とは。
マーケティング業務を自動化し、業務効率化を図るMAツールの中でも、ビーシスは展示会で活用することを想定して開発しました。
展示会で集めた名刺を分類すると、商談に結び付いたり、見積りやサンプルを送ったりできた、いわゆる受注確度の高い名刺は2割程度。残りの8割の名刺には、お礼メールを送ることはできても、それ以上のアクションを起こせず、眠らせてしまうことは珍しくありません。
しかし展示会にわざわざ足を運ぶ人たちは、少なからず自社と関係があるはず。名刺交換した相手からの製品評価は悪くないのに受注に結び付かない理由のひとつは、購入したいベストなタイミングではなかったことが挙げられますが、8割もの人たちがどこの企業ともアクションを起こさないなんてことはあり得ません。つまり残念ながらタイミングが合わなかった潜在的な顧客は、時期を変え、競合他社と契約をしているとも言えます。
こういった考えは理解してもらえてはいたものの、コロナ禍以前は正直、クライアント側の反応は薄かった。なぜなら、出展者は展示会本番で手一杯になるし、集めた名刺のうち2割の来場者を相手にして商売が成り立っていたことも事実でしたから。
コロナ禍になり出展企業の営業活動ができなくなったことで、ビーシスが興味を持たれるきっかけになり、さらにコロナ禍で展示会がなくなったため、ビーシスにバーチャル要素を組み合わせたという経緯があります。開発当初は予定してしなかったバーチャルブースや映像コンテンツ、配信などを加えたのは最近の話で、クライアント側からのリクエストも多く、ビーシスは短期間でどんどんバージョンアップしています。管理している名刺情報をもとにメールを配信し、ランディングページからバーチャルの世界と結び付けることで相乗効果を生むため、われわれはマーケティングツールとバーチャルをセットで提案しています。

 

デジタルならではの
効果的な見せ方探る

―オンライン展示会を実施する上でのポイントは何か。
バーチャルブースが並び、製品画像をクリックすると情報が得られる。企業HPを製品特化型の見た目に変えたようなものですが、よくあるタイプのオンライン展示会です。ただし注意点もあって、まず告知をしっかりと行わなければならないこと。実空間の展示会は告知活動を行うから人が集まります。それはオンライン上でも同様。告知にはメディアのツールを使っても良いですし、リスティング広告など、方法はいろいろありますが、効果的なのはメールマガジン。メールマガジンで優良な情報を提供し続けると、当たり前ですが反応は大きい。まったく接点のない人よりも、自社について知っている人たちだからこそ反応が良いのだと思います。
次に、開設期間が重要です。実際にオンライン展示会を手掛けることが増え、データを分析していく中で分かったことは、最初の1週間が勝負であること。せっかくオンラインなのだから長期間、開設しようという発想になりがちですが、実際には、仮に3ヶ月開設したとしても閲覧数が多いのは最初の1週間。3ヶ月間ずっと見られ続けることはあまりありません。目玉となるトピックスを披露するのも最初が良い。なので、われわれはできるだけ2〜4週間の期間で提案しています。季節ごとや月ごとなど複数回に区切って実施し、その都度コンテンツをアレンジして展開しています。さらに、情報を絞るということも効果的です。情報が多いと閲覧する側も迷って目的の情報にたどり着けない。またサーバーがパンクしたり、動作が鈍くなることもあります。参加してくれた方はファン候補ですが、内容に無駄があると2回目以降は見てもらえなくなります。セミナーの時間も、リアルで行われるものとは異なります。実際の会場であれば長時間聞き続けられても、PCモニター越しだとすぐに退出できてしまいますからね。
こういった実際の展示会とは異なる、オンライン上で実施する際のノウハウはありますが、その上でわれわれができることは、長年、培ってきた製品の見せ方や展示技術をオンライン上で生かすこと。グラフィックやCGのきれいさ、物珍しさ、面白味よりも、どうすればユーザーにとって見やすいのか、情報が伝わりやすいのかということを念頭に置いています。ゲーム性よりは世界観が大切で、何よりも重要なのは製品を深く理解してもらい、商談や受注につなげていくことです。