オンライン展示会に最適な環境とは

新型コロナは展示会の開催スタイルにも変化を与え、現在、主催者はリアルもしくはオンラインのみ、あるいはハイブリッドのいずれかを選び開催している。オンラインで開催する上で利用されるオンライン展示会プラットフォームの開発競争は加速し、サービス自体も乱立している現状だ。数あるプラットフォームのひとつである「zone.」を開発したジールアソシエイツ・永門優作氏に、オンライン展示会プラットフォームについて最低限知っておくべき知識やリアルの展示会への影響について聞いた。


 

■実情に合ったプラットフォーム選びを

「オンライン展示会(イベント)プラットフォーム」と一言で言っても、体験設計という軸で考えると、各サービスの特徴は大きく異なります。2Dグラフィックをメインにしたものをはじめ、例えば、アバターによるライブ感や一体感を体験できる代わりに専用アプリのダウンロードが必要、つまり視聴環境を選ぶものもあれば、オンライン体験や映像への没入感は前者よりは劣るがウェブブラウザ上で誰でも視聴できるものなど。

現時点では視聴環境が制限されないプラットフォームはビジネスイベント向けと言えるでしょう。その上で従来の展示会をバーチャルブースで再現したいという発想も自然です。しかし、バーチャルブースは凝れば凝るほど視聴側の端末の負荷が大きくなり、動作も重くなります。いわばゲームソフトのようなものなので、専用アプリを利用することで解決しますが、ビジネスイベントの参加者に対してアプリのダウンロードを促すこと自体、ハードルが高いように感じます。それゆえ現状では、専用アプリを使わず資料がダウンロードできるだけのハリボテのようなバーチャルブース、あるいはウェビナーを展開するだけのオンラインビジネスイベントとして折り合いをつけるケースが多いのではないでしょうか。

「zone.」はオンラインの体験性は高めつつ、展示会やプライベートショー、学術大会のようなビジネスイベントで活用しやすいよう設計しています。これは、われわれのようなイベント・展示会のプロが開発したからこその特徴だと考えています。

 

■オンラインの使いどころ

あくまでオンラインはリアルイベントを補完するものだと認識しています。オンライン・エクスペリエンス(体験)という概念がありますが、確かにリアルの体験には敵わない。しかし、そのオンライン・エクスペリエンスをわれわれの企画力で高めることはできる。リアルイベントを知っているからこそできる体験デザインがあります。

実際にイベントに来場できない、対面で会えない人がいる中でも営業活動を止めるわけにはいきません。セールススタッフがクライアントに対し、ただ製品カタログを送りつけていかがですか、と尋ねるのではなく、例えば一緒にバーチャル空間に入り、Zoom等を利用し雑談も交えながらブース内を進んでいく。そしてブース奥の製品について説明する。「製品を見せる」までのそのたった1~2分の過程が非常に大切で、バーチャル空間とは相性が良い。これは「zone.」のオーソドックスな使い方で、営業活動のデジタル・トランスフォーメーション(DX)化に大きく貢献できていると思います。さらにコロナ禍に限らず遠方のクライアントへの営業にも活かせることもポイントです。また、このほど、リアル商談会でよく見られる偶発的なコミュニケーションがオンライン上で生まれやすくすることを目的に商談特化型のビデオツール「すもとく」を実装しました。

 

■展示会のあり方を変えていく

ジールアソシエイツ・永門優作氏

これまではリアルがオンラインに置き換わることはあり得ないと思っていましたし、モニター上でPDFの資料を見せるより、現場で直接説明したほうが価値があることは事実です。しかしその価値を定量的に分析し判断することは不可能でした。一方、オンラインではあらゆるデータが得られ、投資対効果を測ることができ、さらにリアルでかかる費用より安くできる。今ではデータの価値が見直され、それが展示会の世界にも当てはまるようになったのではないでしょうか。展示会自体がハイブリッド化とDX化を進めていく必要があります。

リアルの展示会は復活しているとは言え、来場者数減による商談数減という状況はしばらく続くはず。今後はリアルの展示会に合わせ、オンラインでも開催することで減った来場者数を補い、さらに会期後にアーカイブイベント化することで、単独で開催するよりも効果のあるイベントを実施できると考えています。また「zone.」は現在、販売代理店を募集しています。ディスプレイ業界の皆様も是非お問い合わせいただければと思います。