海外ブースの“おもてなし”から学ぶ、日本ブースの未来像 – 東京造形美術

本記事では、国内外の展示会におけるブースデザインのトレンドを比較し、成功する出展のための戦略を探るべく、国内外の展示会出展サポートを手がける東京造形美術の本沢クリスチアーノ氏に話を聞いた。

本沢クリスチアーノ氏(右)

――海外と日本の展示会での出展ブースにはどのような違いがありますか

海外の展示会で特に印象的だったのは「おもてなし」の概念です。来場者が気軽に立ち寄れる空間が提供されています。具体的には、コーヒーやワインを用意し、リラックスした雰囲気で製品やサービスを紹介するスタイルが主流です。対照的に、日本の展示会では繁華街のように客引きが行われるケースが多く、おもてなしは日本を象徴する文化の一つだと思っていましたが、展示会においてはまるっきり薄れているように感じます。
展示手法においても地域や文化による違いは顕著です。例えば、発展途上国も含むアジア圏では、商品の数や種類で勝負するケースが多いです。一方、先進国の欧米では、展示する製品数を絞り、その他のスペースをおもてなしの場として活用します。このようなアプローチは、より質の高い商談を促す効果があるでしょう。

――「おもてなし」の出展のために出展者が押さえておくべきポイントは何でしょうか

前提として、ブースに立つ説明員が商材やサービスに精通し、言葉に堪能でなければなりません。加えて、出展までの準備期間も十分に確保する必要があり、最低でも半年前から出展プランニングを開始すべきです。会期中は、ブーススタッフが持つそれぞれの役割を明確にし、誰もが準備を怠らないようにすることが大切です。
せっかくの海外出展の機会なので、出展者はできる限り多くの商品やサービスを展示したいと考えがちです。ですが最終的な評価は、出展者と来場者の間で良い商談ができたかどうかです。そのためには来場者に楽しんでいただける、話しやすい環境を作ることが重要なのです。

――日本の展示会において、今後ブースデザインが進化するなら、どのような方向性になると予測しますか

今後はリアルとデジタルの展示が並行して行われると考えています。デザインの進化については、単なる機能性よりも、ストーリー性やカスタマージャーニーを考慮した「顧客ベースデザイン」が求められると予測します。このようなアプローチで、より来場者のニーズと感情に寄り添った展示を目指すべきだと思います。

――東京造形美術の具体的な戦略は何でしょうか

世の中でSDGsに対する意識が高まる中、各企業は経済活動をしっかりと行い、なおかつSDGsにも貢献している点を強調することが大切です。当社が導入した「beMatrix(ビーマトリックス)」はそのような要求に応えられるシステム部材であり、展示に活用することで、経済活動とSDGsへの貢献を同時に実現可能です。
また、日本の展示会で特に考えるべきは、人手不足と職人の高齢化という問題です。これらは表面的には出展者や主催者に直接関わりがないように思えますが、実は業界全体に大きな影響を与えています。展示会やイベント業界が衰退していくことはすなわち、最終的には日本経済に悪影響を及ぼします。この問題に対処するべく、我々はデザイン性も生産性をも高めることにも向いているbeMatrixを導入しました。出展者にデザインの魅力を、人手不足の業界には効率的な生産を提供し、さらには環境にも配慮したサービスを実現しています。これにより、全ての関係者が共に利益を享受し、相互に価値を高めることができると確信しています。